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愛と犠牲の果て~人妻を堕とす愛人契約~
第106章 裏切りの重奏
「それなら、2時と言わずに少しでも早く会社に戻って、残ったお仕事を片付けてもらった方が安心だわ。その方が、夜に早く帰ってきてくれるでしょう? 私、そっちの方がずっと嬉しいもの」
「……そうだね。確かに、ここで時間を潰すより、早く終わらせて夜にしっかり一緒にいる方がいいな」
澪の言葉に納得したように、雄一の表情がようやく和らいだ。彼は愛おしそうに澪を見つめると、愛しさを堪えきれないといった様子で、彼女の細い身体を両腕で強く抱きしめた。
「澪……本当に、無事でよかった……」
「雄一さん……」
雄一は澪の顔を包み込むように手を添え、愛を確かめるように唇を重ねてきた。しばらくの間、静かな玄関に二人の息遣いだけが響く。澪は罪悪感に胸を締め付けられながらも、夫の優しい口づけを受け入れた。すぐ近くの洗面所、そのお風呂場の浴槽の中に、今しがた自分を激しく貪っていた若い男が潜んでいるという恐怖に耐えながら。
長いキスの後、雄一は名残惜しそうに唇を離した。
「じゃあ、急いで戻るよ。夜には早く帰るからね」
「ええ、気をつけてね。行ってらっしゃい」
雄一はもう一度澪の髪を愛おしげに撫でると、急ぎ足で玄関を出て行った。ドアが閉まり、再び静寂が戻った室内で、澪はその場にへたり込みそうになるのを必死に堪えていた。
玄関の鍵を閉めると同時に、澪はドアに背中を預けて深く、長い吐息をもらした。心臓の激しい鼓動は、雄一の姿が見えなくなった今もなお、耳の奥でうるさいほどに鳴り響いている。
(助かった……。何とかごまかせた……)
一時の危機を脱したことに、ほっと胸をなでおろす。しかし、安堵の直後に押し寄せてきたのは、底寒いほどの虚無感だった。
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