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愛と犠牲の果て~人妻を堕とす愛人契約~
第104章 ほだされた情愛
律弥の口から語られる生々しい記憶に、澪は小さく息を呑んだ。律弥は熱を帯びた声で、さらに言葉を重ねていく。
「それに、実はあの後、澪さんがホテルからお帰りになる時、僕はフロントに立っていたんです。すべてを終えて、衣服を身に纏ってロビーを通り抜けていく澪さんの姿を、僕はカウンターの奥からずっと見ていました。あの時の澪さんは……あんな酷い目に遭った直後なのに、信じられないくらい凛としていて、そして清楚で、僕の目には神々しいほど美しく映ったんです。一瞬で、完全に心を撃ち抜かれました。あんなにも気高くて美しい女性が、あの部屋では僕の目の前であられもない姿を晒していたなんて……そのギャップを突きつけられて、男として、頭が狂わないわけがなかったんです」
彼が抱く澪への感情は、単なる安っぽい肉欲や一時の気まぐれなどではなかった。あの凄惨な夜、絶望的な状況下でも失われなかった澪の気高さと美しさに、二十歳の心は深い衝撃を受け、狂おしいほどの憧れと恋情を植え付けられていたのだ。ただの子供だと思われたくない、あの神聖な女性に少しでも男として認められたいという、若さゆえの暴走が今回の行動に繋がっていた。
語られる言葉の端々から、彼が抱く想いの純粋さと深さが痛いほど伝わってきた。そこには、一人の男として憧れの女性を強く欲し、尊ぶという、瑞々しくも狂おしい敬愛の念がしっかりと息づいていた。
彼のその真摯な吐露を間近で聞いた澪は、すとんと胸のすくような衝撃を覚えていた。 ただの身勝手な誘拐犯であり、自分を慰みものにしようとするだけの男だと思っていた時雨崎律弥。しかし、彼の内面と、自分に向けられた感情の本質を知れば知るほど、その認識は脆くも崩れ去っていく。彼に対する見方や、これからの接し方、そして彼という存在そのものへの考え方が、澪の中でさらに大きく、根底から変わり始めていくのを、彼女は静かに自覚していた。
しんとした静寂が流れる中、律弥はふと我に返ったように目を見開いた。自分の生い立ちから澪への狂おしい憧れまで、心の内をすべて一方的に曝け出してしまったことに、今さらながら気づいたらしい。彼は赤面し、慌ててグラスを両手で包み込んだ。
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