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シアター"名画座"で逢いましょう
第1章 シアター"名画座"
五列ほど前方のシートに佳純が陣取ると、すぐさま太った紳士が佳純の隣に移動してきた。
佳純は親しそうに二言三言会話を交わすと、あっという間にその太った紳士とキスを交わし始めた。
『まあ!佳純ったら大胆だわ!!』
それがフレンチ・キスではないのは一目瞭然だった。
いつまでも互いの唇を貪りあい、やがて佳純の腕は太った紳士の首に巻き付いて熱い抱擁を始めた。
「フラレちゃいましたか?」
不意に声を掛けられて、日菜子は飛び上がらんばかりに驚いた。
「あっ…驚かせてしまいました?すいません」
後ろの通路から声をかけてきた男は、とても自然な動作でスッと日菜子の隣の席に移動してきた。
『えっ?ウソ!やだ!…』
急いで逃げようと腰を浮かしかけた日菜子に「待って…逃げないでください」と日菜子の腕をガシッと掴んできた。
「あなたたちが劇場内に入ってきてからずっと目で追いかけていたんです。
仲良く手を繋いでいたから、あそこに腰を降ろした女性とレズビアンの関係かなと推測したんですが…違いますか?」
レ、レズビアン?!
そんな風に周りから見られていたのかと思うと、顔から火が吹き出るほどに恥ずかしくて、否定の言葉の代わりに首が千切れるのではないかと思うほどブンブンと横に振った。
「レズビアンじゃない?よかった…じゃあ、あなたを誘っても構わないってことですよね?」
男はこちらを見つめるでもなく、スクリーンから目を離さずに独り言のように呟いた。

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