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2026 人質交換を託された女 (上巻)
第5章 スマートマウス(2)
まさか…という想いで急ぎ足で駆け寄る。それは課長だった。
大きな声を出したい衝動を抑え、「澄玲(すみれ)さん…」と課長の名を呼び、鉄格子に縋(すが)りつく。ストッキング越しに冷たいコンクリートの感触があったが、目線を合わせるように腰を落とし、彼女の様子を伺う。指先で触れた冷たい金属の感触、それは縄とは違う残酷な絶望だった。
地下室の冷え切った空気が、銀行の制服越しに肌を刺してくる。
課長の変わり果てた姿に、目頭が熱くなる。私が伝えた『行員たちは無事…拘束されていない…』という嘘が、どれほど残酷な裏切りであったかを突きつけられる。
彼女は、赤い縄で胸の上下を縛られていた。膝を立てた両脚にも縄が這っていた。彼女は奥の壁に体を預け、休んでいた。会話さえ許されない非情な猿ぐつわを咬まされ、「…ンン…」と声を上げていた。その潤んだ瞳は『逃げて…』と言っているのか、あるいは『助けて…』と訴えているのかさえ、判断できなかった。
澄玲さんは私の姿を見つめ、少し顔を上げるものの、動きに力なく、体力が消耗していた。
早くここから出してあげたいが、出入口の扉には南京錠が掛けられ、その冷たい鉄の塊は、素手ではどうすることもできない重さだった。すぐには救い出せないと分かったが、このまま課長を置いて、どこかに行くことはできなかった。
大きな声を出したい衝動を抑え、「澄玲(すみれ)さん…」と課長の名を呼び、鉄格子に縋(すが)りつく。ストッキング越しに冷たいコンクリートの感触があったが、目線を合わせるように腰を落とし、彼女の様子を伺う。指先で触れた冷たい金属の感触、それは縄とは違う残酷な絶望だった。
地下室の冷え切った空気が、銀行の制服越しに肌を刺してくる。
課長の変わり果てた姿に、目頭が熱くなる。私が伝えた『行員たちは無事…拘束されていない…』という嘘が、どれほど残酷な裏切りであったかを突きつけられる。
彼女は、赤い縄で胸の上下を縛られていた。膝を立てた両脚にも縄が這っていた。彼女は奥の壁に体を預け、休んでいた。会話さえ許されない非情な猿ぐつわを咬まされ、「…ンン…」と声を上げていた。その潤んだ瞳は『逃げて…』と言っているのか、あるいは『助けて…』と訴えているのかさえ、判断できなかった。
澄玲さんは私の姿を見つめ、少し顔を上げるものの、動きに力なく、体力が消耗していた。
早くここから出してあげたいが、出入口の扉には南京錠が掛けられ、その冷たい鉄の塊は、素手ではどうすることもできない重さだった。すぐには救い出せないと分かったが、このまま課長を置いて、どこかに行くことはできなかった。

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