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2026 人質交換を託された女 (上巻)
第5章 スマートマウス(2)
一番尊敬している捜査員に、嘘をつかなければいけない屈辱は、肉体的な苦痛をはるかに凌駕していた。
「安心してください…私も拘束されていません…」
その言葉は、男たちに対する服従の証となっていた。
「なら…よかった…行員たちの側にいてやってくれ…彼女たちはお前以上に不安だろうからな…」
スピーカー越しに聞こえてくる、先輩の安堵した声。あえて『お前の嘘に乗った』ような落ち着いた声だった。彼は偽りの平穏を見抜いたはずだった。そして私がもう『対策本部の味方ではない…』という事を理解したはずだ。
私が「はい…」と言ったのを最後に、主犯格の男の手がゆっくりと、スピーカーのボタンを押して、通話を切断した。
胸の奥に残る『拘束されていない…』という嘘の重み。それが縄の拘束を改めて感じ、左右に揺らす肩に全身に重くのしかかってくる。男たちの支配は肉体だけでなく、共犯者としての刻印を心にも深く刻んでいた。
私は女性たちを守るために噓をついた。その瞬間、法を守るべき私の言葉(スマートマウス)は、男たちの意志を伝える『拡声器』になり、凶器への変わり果てていた。
張り詰めていた糸が切れ、支えがなければ崩れ落ちるほど、力が抜けていった。男は背中の縄を掴み、再び私に所有権を認識させる。
主犯格の男が、背後の男に向かい、顎で指示を出していた。
『あっちへ連れて行け…』
そう解釈できる顔の動きだった。
主犯格の男の目は、絶対的な自信の現れのように思えて、背筋に冷たいものが走っていく。
荒い息を吐き出しながら、私は強制的に椅子に座らされた。椅子がクルリと回転し、体の向きは再び薄暗い通路に向いていた。
「安心してください…私も拘束されていません…」
その言葉は、男たちに対する服従の証となっていた。
「なら…よかった…行員たちの側にいてやってくれ…彼女たちはお前以上に不安だろうからな…」
スピーカー越しに聞こえてくる、先輩の安堵した声。あえて『お前の嘘に乗った』ような落ち着いた声だった。彼は偽りの平穏を見抜いたはずだった。そして私がもう『対策本部の味方ではない…』という事を理解したはずだ。
私が「はい…」と言ったのを最後に、主犯格の男の手がゆっくりと、スピーカーのボタンを押して、通話を切断した。
胸の奥に残る『拘束されていない…』という嘘の重み。それが縄の拘束を改めて感じ、左右に揺らす肩に全身に重くのしかかってくる。男たちの支配は肉体だけでなく、共犯者としての刻印を心にも深く刻んでいた。
私は女性たちを守るために噓をついた。その瞬間、法を守るべき私の言葉(スマートマウス)は、男たちの意志を伝える『拡声器』になり、凶器への変わり果てていた。
張り詰めていた糸が切れ、支えがなければ崩れ落ちるほど、力が抜けていった。男は背中の縄を掴み、再び私に所有権を認識させる。
主犯格の男が、背後の男に向かい、顎で指示を出していた。
『あっちへ連れて行け…』
そう解釈できる顔の動きだった。
主犯格の男の目は、絶対的な自信の現れのように思えて、背筋に冷たいものが走っていく。
荒い息を吐き出しながら、私は強制的に椅子に座らされた。椅子がクルリと回転し、体の向きは再び薄暗い通路に向いていた。

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