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2026 人質交換を託された女 (上巻)
第5章 スマートマウス(2)
男は点滅している回線のボタンを1度押した。『スピーカー』と示されたボタンが緑色で光っているのが見え、私は電話機に体を寄せていく。

「もしもし…吉村です…」と私が先に口を開いた。

すぐに「吉村か!無事なのか…?」と尋ねられた。その声は交渉役として派遣される直前、私を勇気づけてくれた先輩だった。対策本部の逼迫した様子が、先輩の声から伝わってくる。

主犯格の男の視線が鋭く、肩に置かれた手の重みが、逃げ場のない現実を、そして「失敗は許されない」という無言の圧力を刻んでくる。

助けを求めたいという本能と、嘘をつかなければならない状況が、私の喉を締め付け、激しい嫌悪感が込み上げてくる。

「はい…大丈夫です…」と落ち着いて話していた。

芽の前のソファでトランプを弄ぶ主犯格の男が、薄笑いを浮かべながら「嘘」の精度を見定めている。

「2時間も連絡がなく…心配したぞ…」
先輩から『2時間』という具体的な時間を教えられ、私は驚き、ふぅと息を吐いた。
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