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夜来香 〜若叔母と甥、禁忌の果て〜(改訂版)
第16章 アトリエ
【ずっとそんな目で視られていたら描くものも描けませんよ…】
「部長…斜め後ろ姿でお願いできますか…あのスケッチじゃ納得いかないので…ちゃんとデッサンしてみたいんです…」
先輩はこちらの真意を覗き込むかのように見つめて、微笑んだ。
「わかりました…じゃあ、藤沢くんはそこの椅子に座ってください……私は…えっと…あ、この辺りがいいですね……」
陽翔はバッグから筆箱を取り出して中からやたらと芯の長い鉛筆を手にした。
きっと普段、先輩が使っている木製の丸椅子に腰掛ける。
先輩は背凭れのある、やはり木製の椅子を引きずりモデルになる位置を決めた。
こちらをちらりと視て、椅子の角度を決めると… 左膝を座面につくように乗せる。
右脚は真っ直ぐ床について、左手は背凭れに置き、右手で髪を耳にかける仕草をした後…自然に下に下ろした。
ドキッとした。
斜め後ろ姿の完璧なフォルムがそこにあった。
撫で肩の柔らかなラインの始まりは、片膝を上げていることに背中から腰を食い込ませ、そこから上向きのヒップラインを強調していた。
自然に下ろした腕がその向こうに覗く柔らかそうな膨らみを嫌味なく出現させている。
真っ直ぐに伸びた美脚…そこで陽翔は違和感に気づいた。
【部長…そこに立ったのは偶然ですか?…】
美人でスタイルもいいのは解っている。
その先輩がポージングする姿になんでここまでドキマギしているのか…。
アトリエは夏の日中にしてはどこか仄暗い印象だった。
先輩が椅子を使って立った場所は… 天井近くの壁際にある天窓から南向きの陽の光が斜めに射し込んでいた。
先輩の身体を斜めに光が照らしている。
胸元からヒップにかけて斜めに…左足のローファーに掛かるように…陰陽のコントラストを見事なまでに創り上げていた。
もうその空間そのものが絵画に思えた。
「こんな感じでどうですか?……」
「か、完璧です……」
「それは良かったですね……」
陽翔は新しいページに線を入れていった。

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