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O……tout……o…
第1章 おとうと
 34

 そして上京し、10年が経った…
 いや…
 絶ったのだ。

 ただ母親から…
『生存確認だけは…してね…』
 と頼まれ、住所と電話番号だけは知らせてあった。

 だから、この『結婚式招待状』が届いたのだと思われるのだが…
 もちろん、しんちゃん、義弟とはあれ以来会ってはいない。


「…ね、ねぇ…あーちゃん、ねぇ、葵ちゃん…
 ねぇ、どうしたの…」

「……ぁ…」
 わたしはこのタカシの慌てた声音の呼び掛けに、フッと我に還った。

「……え、あ…う、うん…」
 そして、こんな不惑な反応に…

「あ、ご、ごめん……ガマンできなくって……」
 そう謝りながら、慌ててティッシュでわたしの唇周りに飛び散っている自分の精液を拭いてくる。

「………ね、ねぇ、あーちゃん……て?…」
「え、あ、うん、葵、あおいちゃんだから…… 
 あーちゃん……だけど………」
 タカシは少しキョドった感じで言ってくる。

「えっ、だって、今まで…
 そんなふうに呼んだことなかったじゃんっ」

「え、あ、あぁ、うん…」
 わたしのキツイ聞き方に、更にキョドる。

「そ、そんな、あ、あーちゃん…だなんて……」
 このわたしの様子に…

「あ……え………ぁ…」
 すっかり戸惑いの色を浮かべてきた。

 それはそうであろう…
 こんなわたしの過去の、いわゆるトラウマのことなんて、タカシが知る訳もなく、いや、想像さえ付くはずがないのだから。

 ただ、タカシは無意識に、わたしのトラウマの爆弾のスイッチを踏んでしまっただけなのだから…
 でも、もう無理であった…

 招待状が届いた今…
 そして脳裏いっぱいに、あの過去のしんちゃん、義理の弟との禁忌のトラウマがリアルに蘇ってしまった今となっては…
 もう…
 今夜は一緒に居られない。

 いや、もう…
 このタカシとは終わり…
 潮時であろう。

 だって、この…
 タカシ=しんちゃんというイメージの図式が…
 あの最悪なトラウマが…
 今、正に、心に深く刻みこまれてしまったであろうから。

 そして、ふと、思い当たった…
 このタカシとしんちゃんて…
 同じ年齢だったんだ……と。

 トラウマが故に、必死に、懸命に、脳裏の奥深くに仕舞い、フタを閉じて鍵を締めたつもりでいたから…
 思いも、考えも、気付きもしなかったのだ………と。




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