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イケナイアソビ。
第8章 恋して! ウェアウルフ
「椎名さんっ?」
(どこにいるの?)
窓が開いている。どうやら彼は開放されていた窓からバルコニーを抜け、逃げたらしい。
おそらくは田牧が放った弾が命中したのだろう。狼がいたであろうそこには鮮血らしき液体で濡れている。
(あの身体でーー……)
……宝の全身から血の気が引いていく。
このままの状態だと彼は死んでしまうかもしれない。
宝の脳裏に、目を閉ざし、それっきり動かなくなった丞の姿が過ぎる。
(そんなの嫌だ!!)
宝は、丞に殺されそうになった事も忘れ、急ぎ階段を駆け下りて屋敷を出る。
幸い、少し時間が経過したおかげで目が暗闇に慣れてきた。
見下ろせば、血のような跡が地面に点々と落ちているのが見える。血の後を追った。
先を急ぐ宝の足は、今もなお振り続けている小雨のおかげでぬかるみに捕らわれる。
「椎名さん! 椎名さん、どこにいるの?」
(どうしよう!)
もし、丞が息絶えてしまっていたなら……。
息を乱し、不安定な足場で何度も転びそうになりながら、それでも大地に滴り落ちている血液を追って先を進めば、やがて視界が開けた。
天井を張り巡らすように存在した木々の枝枝はそこになく、ぽっかりと空いた藍色の空から満月が見える。
ここは動物たちの水飲み場だろうか、湖が広がっていた。
月光が水面を照らす。
幻想的なこの光景は、今のこの状況でなければうっとりと眺めていたいところだが今はそれどころではない。丞の一大事なのだ。
宝は目を細め、深手を負った狼を探す。すると一際目立った大きな樹木ーーそこに、傷を負った一際大きな銀色の狼が横たわるようにして倒れているのを発見した。
「椎名さん、椎名さん!!」
彼が受けた傷は宝が想像していたよりもずっと深い。右の前足からはだくだくと血液が流れていた。肺は萎んだり膨らんだりを繰り返し、開きっぱなしの口からは苦しそうな声が放たれる。
「ああ、どうしようっ」
このまま放って置いては彼が死んでしまうかもしれない。宝は首元のネクタイを外し、傷ついた前足を縛って止血を試みる。
仮に、このまま血が止まったとしても助かるという保証はない。
血を流しすぎているのかもしれない。それには輸血が必要だ。しかし彼は人間であり、同時に狼でもある。いったい誰に診てもらえばいいのだろう。

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