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紅蓮の夜に、君をさらう
第1章 炎の宮殿、出会いの夜
王族の私とは、所詮――相容れぬ人。

でも、今は誰も見ていない。

誰も、私の背中を押さないのなら、自分で――

私は決意して、門の外へと駆け出した。

夜の静けさの中、彼の姿を見つける。

「……あのっ!」

私の声に、彼が振り返る。

――やっぱり、美しい人だった。

闇の中でも輝くような瞳。

火の光に照らされた姿は幻のようで、それでも確かにそこにいた。

「お礼を言いたくて……」

私の声は、震えていた。

「いや、礼なんか――」

その瞬間。

張り詰めていたものが、ぷつりと切れた。

気が抜けたのだろうか。

身体がふわりと傾き、そのまま地面に倒れ込む。

視界がぐにゃりと歪む中で、誰かの強い腕が私を支えるのを感じた。

「……あんた、王族ってやつは、やっかいだな」

その声は、どこか呆れながらも、優しかった――
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