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第32章 再会

「わかったよ。ま、俺が話す内容は伝聞だけど、信憑性はあると思う。その福永という先輩は、既婚だけど、子供がいない。というか、できない。不妊治療もしたけど無理だったんだ」

と、話し始めた佐川。『子供ができない』『不妊治療』というフレーズは実雅子には無視できるフレーズではなかった。自分もそうだから・・・。そして、それに悩んできたから。

実雅子の反応を見る佐川。案の定、実雅子の顔色が曇った。

「福永先輩は、無精子症ではないけど、限りなくそれに近いくらい薄く、動きも悪い精子しかなくて、奥さんも、排卵する卵子の状態が悪い状態で、顕微授精でも受精卵ができなくて、諦めたらしい。実雅子の旦那が、福永先輩が35歳で結婚して10年も経つのに、子供がいないと聞いて、『不妊か？』と聞いたそうだ。福永先輩が事情を話すと、実雅子の旦那も『俺のところもそうだ』と、打ち明けたそうだ」

と、言って実雅子の表情を確認する佐川。

　　　　そんなことを
　　　　暴露しているなんて。
　　　　何を考えているの？
　　　　でも、
　　　　秘密のことだとは言え、
　　　　誰かに話したかったのかも。
　　　　同じ境遇の人だったから。
　　　　そうね。
　　　　わたしも同じ境遇の人が
　　　　身近にいたら、話すかも。

溜息が漏れたが、でも、夫の気持ちがわからなくもなかった実雅子。

「先輩は35歳だし、奥さんも32歳で、不妊がわかってから5年経つけど、盛んでさ、毎晩、三回戦らしい。それで、先輩は、実雅子の旦那も同じだと思って『不妊だから子供はできないですが、避妊する必要もないので、毎晩、中出ししてハッスルしています』って話したら、実雅子の旦那は、『妻の夜の営みの要望を尤もなことだと思うが、俺は歳だから無理だよ。誰か俺に代わって妻を満足させてくれればいいのだが』って愚痴っていたそうだよ」

と、言って笑った。

「え？」

と、だけ言って絶句した実雅子。

　　　　　あり得ない。
　　　　　でも、夫は・・・。
　　　　　そうね。
　　　　　あんな動画を
　　　　　見ているくらいだもの。
　　　　　単なる興味本位だと
　　　　　思っていたけど・・・。
　　　　　わたしを誰かが
　　　　　満たしてくれることを
　　　　　妄想しながら
　　　　　あの動画を見ていたの・・・。