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第29章 夫婦円満には不倫

サランが帰宅すると、重村定勝、反町茂、関壮輔、夫の志温、佐藤慎二、斎田慎太郎が集まっていた。そして、見知らぬ禿げ頭の中年男。その男が、

「○○ハウスの神戸支店営業三課の課長の篠崎秀一です」

と、自己紹介をした。

「篠崎課長は、俺の学生時代の先輩で35歳。〇〇学院大学の合気道部のOBです」

と、篠崎の説明する壮輔。サランは内心、

　　　　こんなオッサンと
　　　　同い年・・・。
　　　　禿げ頭だから
　　　　中年だと思ったじゃん。

と、笑いをこらえた。

「今日、来たのは、村上義隆氏の件で、関くんから連らをいただき、関くんが、何か情報がないかということでしたので、耳よりというほどかどうかはわかりませんが・・・」

と、話し始めた篠崎。

「村上義隆氏に対しては、私も思うところがありまして」

と、話した篠崎に、

「というと？」

と、合いの手を入れたのは、重村定勝。

「契約破棄をされたことです。こちらも時間を使って、人も動員して、いろいろご提案をしました。それを突然、破棄といわれても、理不尽だと思うのは当然です」

と、話す篠崎。

「契約破棄の理由は、色仕掛けが原因と聞きましたが」

と、反町茂が話した。

「色仕掛け？上得意のお客様に喜んでいただけるように我々としては精一杯、サービスをしたつもりです。色仕掛けと言って怒り出したのは村上義隆氏です。我が社としては創意工夫を凝らして、『おもてなし』をしたつもりです。それが、どうも村上義隆氏には気に入っていただけなかった様子で、『妻が家で待っておりますので』と急に席を立たれて、『こういうことをするとは思ってもみなかった』と仰り、『女性をこういう風に扱うような会社と一緒に物事を進めることはできない』と、私が『それはどういう意味ですか』と尋ねると、『契約は無かったことにさせてもらう』と宣言され、それ以来、連絡が取れません」

と、篠崎が語った。それが要するに色仕掛け失敗ということと、集まった男性陣は思ったが、当の篠崎は思っていない様子で、理解に苦しむという表情で、同意を求めるのだが、誰一人として、同調する風はなかった。が、このままでは話が進まないと、サランが、

「ところで、『耳よりというほどかどうかは』という情報はどんな内容なのですか？」

と、聞いた。