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溶け合う煙のいざないに
第3章 欲望の赴くままに

 ああ、それで。余計なことを言わないように奥歯を擦り合わせていたけれど、沈黙が熱を冷ましてしまうのも嫌で口を開いた。
「そ……それは、オレとの相性最高ってことでいいんだよね」
 叱ってくれるかと思ったら、案外受け入れるように小さく頷かれたので心臓が馬鹿みたいに騒ぎ出す。痒い、痒いって。
「じゃあ、さ。これから先、オレにしか聞かせないんなら、よくない? どんな声も聴きたいし」
 勇気を出して言ったつもりなんだけど、そんな呆れられても。
「なんで」
 そんな三文字で打ち返されると言葉に詰まる。
「だ、から、嫌な時は止まるし、いや。あの声聞いたら止まれないかもだけど。上下変わっても鐘二さんが飼い主だから。好きに命令してくれればいいし」
「何言って……何言わせてんだ、俺は」
「ちがう、ちがう。鐘二さんはなんにも悪くなくて。ただ、許可が欲しい」
「許可?」
 緊張が昇ってきて、眉を掻く。
「その、聞いていい許可」
 なんだよ、それ。我ながらワードチョイスが終わっている。
「なんだよ、それは」
 ほら言われちゃった。相手は文字で飯食ってるというのに。
 苦手なんだよ、うまく説明するのなんて。肌が重なればもうよくない?
「好きだから、全部晒しあいたいし。声、出させたい」
 やっと重なった視線に拒絶の色がないことに悦んでしまう自分がいる。
「……ひとつ、ルールを」
 ぎこちない命令に生唾を飲み込んでから二度頷く。
「絶対、可愛いって言うな」
 可愛い。
 どうしよう、危ない。いつでも口が滑ってしまいそうだ。
「わかった」
「わかってないだろ」
「わかったから。顔見ない方がいいんでしょ。うつ伏せになって」
 本音は正上位で凝視したいけど、首と背中を好きにいじれる寝バックがきっといい。意を決したように溜息を吐いて、枕を横向きで胸元に敷いて背中を見せてくれた。
 腿裏を跨ぐと、広くて白いその肌を首から腰に向かって眺める。
 今からこの体の中に入るのだと思うだけで、痛いくらい硬くなる。
「……息。変態みたいだ」
 冷静に指摘されて、ハッと口元を覆う。確かに自分でも引くくらいに息が上がっていた。日に焼けていない張りのある曲線を見てたら我慢が出来ない。
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