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やっと、逢えた
第2章 待てど暮らせど

葵が告げた名前は、
勿論、俺は知らない。
客のカルテを観ることはないし、
客の話を葵から聴くこともないからだ。
「ほら。
いつもグッチの靴で来る…」と言われて、
そういえば彼女に初めて会った日に葵の客として来ていたオトコがグッチの靴を履いていたことを思い出した。
「ああ。
あいつか。
と言っても会ったことも観たこともないが」
「『大切な秘書を診てやって欲しい』と言われたんですよ。
支払いも自分がするからと言って…。
でも、彼女、しきりに『そういうわけにはいきません』と言うので、
今回はお試しで無料ですと言って、
なんとか帰って貰ったんです」
「その…。
彼女はあのオトコと『特別な関係』でも…」
葵はケラケラと笑うと、
「次の予約の時に白蘭様が確かめれば?
アタシが触れた感じでは、
どう考えてもバージンでしたけどね。
匂いもそんな感じだったけど、
白蘭様やお館様と違って、アタシは『普通』のニンゲンだから、
その辺り、正確には判らないし…」とな言った。
「きっちり二週間後の17時ですよ?
次の予約は。
あーあ。
料金、どうします?
単なるOLにはとても払えないですよね?
基本、アタシですら1時間10万だから。
白蘭様だと、一桁違うし」
葵の声はもう、聴いてなかった。
部屋に残った彼女の甘い匂いに酔ってしまいそうになりながら、
彼女の名前を頭の中で繰り返していた。
勿論、俺は知らない。
客のカルテを観ることはないし、
客の話を葵から聴くこともないからだ。
「ほら。
いつもグッチの靴で来る…」と言われて、
そういえば彼女に初めて会った日に葵の客として来ていたオトコがグッチの靴を履いていたことを思い出した。
「ああ。
あいつか。
と言っても会ったことも観たこともないが」
「『大切な秘書を診てやって欲しい』と言われたんですよ。
支払いも自分がするからと言って…。
でも、彼女、しきりに『そういうわけにはいきません』と言うので、
今回はお試しで無料ですと言って、
なんとか帰って貰ったんです」
「その…。
彼女はあのオトコと『特別な関係』でも…」
葵はケラケラと笑うと、
「次の予約の時に白蘭様が確かめれば?
アタシが触れた感じでは、
どう考えてもバージンでしたけどね。
匂いもそんな感じだったけど、
白蘭様やお館様と違って、アタシは『普通』のニンゲンだから、
その辺り、正確には判らないし…」とな言った。
「きっちり二週間後の17時ですよ?
次の予約は。
あーあ。
料金、どうします?
単なるOLにはとても払えないですよね?
基本、アタシですら1時間10万だから。
白蘭様だと、一桁違うし」
葵の声はもう、聴いてなかった。
部屋に残った彼女の甘い匂いに酔ってしまいそうになりながら、
彼女の名前を頭の中で繰り返していた。

