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波の音が聞こえる場所で
第9章 安奈という女について
やつらがギャラを要求することはまずない。だってやつらの心は僕なんかと違って清らかなのだ。そんな心の持ち主が「弁当とか出んの?」とか汚い言葉を使うはずがない。
奉仕の精神、そうだやつらは奉仕の精神でこの店にやってきて賛美歌を歌う。だからやつらは交通費も求めない。きっとこのクソ寒い新潟まで自腹でやってくる。やつらだって歌いたいに違いない。だってそうだろ、賛美歌は池袋より新潟が似合っているのだから。
だがここで大きな問題が僕の目の前に立ちはだかった。そもそも僕にはそういう友達が一人もいない。そして僕には友達と呼べる人間が少ない。直江は僕のことを親友だと思っているだろうか。
だが直江には借りがある。そんな直江にバンドを呼ぶイベンターのような真似はさせられない。そして山名と権藤。こいつらは親友ではない。友達でもない。大学で会ったりしたら挨拶を交わす程度の人間だと僕は思っている(思うようにしている)。
だって僕が冒険に出なければならなくなった原因の一%くらいはこいつらにある……。こいつらのせいで……。ダメだダメだ。誰かに責任を押し付けている時点で僕は負けている。目を背けたくなるような過去だって、結局は僕自身の問題だ。。
まぁ、山名や権藤には賛美歌を歌うような友達はいない……いないはずだ……いないだろう。
「先輩、どうかしましたか?」
「賛美歌のことを考えていたんだ」
いっちゃんの声で僕は正気に戻った。サンキュー、いっちゃん。でもこれ以上、賛美歌のことは考えない。
「先輩、ちょっとこれ気になるんですけど」
いっちゃんの手にカセットテープが握られていた。いっちゃんは白組優勝のためにずっとアマゾンの箱の中からクリスマスを探していた。いっちゃん、ごめん。
「ちょっと見せて」
僕はいっちゃんからカセットを受け取った。カセットには漢字で二文字『安奈』と書かれていた。
「クリスマスとか関係ないですよね?」
「安奈って誰?」
「多分女の人じゃないですか?」
「だよね」
『安奈』の情報がもう少し欲しい。だが今はどこにいても『安奈』の情報が手に入る。ナイスな時代だ。
いっちゃん、スマホを取り出して『安奈』を検索中。
「先輩!これ当たりかもしれません」
いっちゃん満面の笑みで僕にそう言う。
「何で?」
僕はいっちゃんのスマホを覗いた。
おおおおお!
奉仕の精神、そうだやつらは奉仕の精神でこの店にやってきて賛美歌を歌う。だからやつらは交通費も求めない。きっとこのクソ寒い新潟まで自腹でやってくる。やつらだって歌いたいに違いない。だってそうだろ、賛美歌は池袋より新潟が似合っているのだから。
だがここで大きな問題が僕の目の前に立ちはだかった。そもそも僕にはそういう友達が一人もいない。そして僕には友達と呼べる人間が少ない。直江は僕のことを親友だと思っているだろうか。
だが直江には借りがある。そんな直江にバンドを呼ぶイベンターのような真似はさせられない。そして山名と権藤。こいつらは親友ではない。友達でもない。大学で会ったりしたら挨拶を交わす程度の人間だと僕は思っている(思うようにしている)。
だって僕が冒険に出なければならなくなった原因の一%くらいはこいつらにある……。こいつらのせいで……。ダメだダメだ。誰かに責任を押し付けている時点で僕は負けている。目を背けたくなるような過去だって、結局は僕自身の問題だ。。
まぁ、山名や権藤には賛美歌を歌うような友達はいない……いないはずだ……いないだろう。
「先輩、どうかしましたか?」
「賛美歌のことを考えていたんだ」
いっちゃんの声で僕は正気に戻った。サンキュー、いっちゃん。でもこれ以上、賛美歌のことは考えない。
「先輩、ちょっとこれ気になるんですけど」
いっちゃんの手にカセットテープが握られていた。いっちゃんは白組優勝のためにずっとアマゾンの箱の中からクリスマスを探していた。いっちゃん、ごめん。
「ちょっと見せて」
僕はいっちゃんからカセットを受け取った。カセットには漢字で二文字『安奈』と書かれていた。
「クリスマスとか関係ないですよね?」
「安奈って誰?」
「多分女の人じゃないですか?」
「だよね」
『安奈』の情報がもう少し欲しい。だが今はどこにいても『安奈』の情報が手に入る。ナイスな時代だ。
いっちゃん、スマホを取り出して『安奈』を検索中。
「先輩!これ当たりかもしれません」
いっちゃん満面の笑みで僕にそう言う。
「何で?」
僕はいっちゃんのスマホを覗いた。
おおおおお!

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