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天狐あやかし秘譚
第73章 動如雷霆(どうじょらいてい)

ドクン・・・とカダマシの身体が震えた。ビシと水公結界が軋む。
「あ・・・お・・・お・・・」
「オマエ、何もできない・・・デクノボー・・・思われているだろ?」
カダマシの巨体が、ガタガタと震えだす。ズズズと地鳴りが起き、周囲の森の生き物たちはその殺気に当てられ、我先にと宙に、森の奥に逃げようとし始める。
まずい、まずい・・・
なんか知らないけど、まずい!
しゅん・・・と闇夜に影が舞った。
カダマシとサトリの背後に、黒い影が浮かび上がる。
それは左手で槍を一閃させた。
「オマエ・・・槍で・・・ガアっ!」
サトリの首が切り裂かれ、ついでに、カダマシの首も切断される。
影の正体はダリだった。左手には退魔の槍『天魔反戈』があった。
「お!やりよった!」
ダリがその意を極限まで消した一撃で、心を読む妖怪サトリの首を刎ねたのだ。そして、その勢いで、カダマシの首も一緒に・・・。
土御門が細い目を見開く。土門はその横でガッツポーズだ。
終わった・・・、誰もがそう思った瞬間。
ボコン!とカダマシの背中が弾け、なにか黒いものが飛び出してきた。その黒いものは、素早く森の木を蹴飛ばし、陰陽師たちに突っ込んでくる。
瀬良を土御門が、綾音をダリが守り、後は、それぞれが回避行動を取るのが精一杯だった。
その一瞬の隙に、その黒い影は、クチナワをかっさらって、森の奥に奔っていった。
「あかん!逃げよった!」
ちらりと星明かりに見えた黒い影の正体は、巨大な狼のようなフォルムの傷ついた獣。カダマシの変形のひとつ『大口真神』だった。
「逃がすな!追えぃ!!」
左前と大鹿島が一斉に飛び出す。遅れて、瀬良、綾音、ダリ、土御門が走り出した。しかし、手負いとは言え、カダマシの変形の内で最速を誇る『大口真神』だ。追いつける気配はまったくなかった。
あっという間に森の暗闇に溶けてしまう。
「クソ!」
土御門が歯噛みしたときには、すでに、敵の気配は杳として知れなかった。
「あ・・・お・・・お・・・」
「オマエ、何もできない・・・デクノボー・・・思われているだろ?」
カダマシの巨体が、ガタガタと震えだす。ズズズと地鳴りが起き、周囲の森の生き物たちはその殺気に当てられ、我先にと宙に、森の奥に逃げようとし始める。
まずい、まずい・・・
なんか知らないけど、まずい!
しゅん・・・と闇夜に影が舞った。
カダマシとサトリの背後に、黒い影が浮かび上がる。
それは左手で槍を一閃させた。
「オマエ・・・槍で・・・ガアっ!」
サトリの首が切り裂かれ、ついでに、カダマシの首も切断される。
影の正体はダリだった。左手には退魔の槍『天魔反戈』があった。
「お!やりよった!」
ダリがその意を極限まで消した一撃で、心を読む妖怪サトリの首を刎ねたのだ。そして、その勢いで、カダマシの首も一緒に・・・。
土御門が細い目を見開く。土門はその横でガッツポーズだ。
終わった・・・、誰もがそう思った瞬間。
ボコン!とカダマシの背中が弾け、なにか黒いものが飛び出してきた。その黒いものは、素早く森の木を蹴飛ばし、陰陽師たちに突っ込んでくる。
瀬良を土御門が、綾音をダリが守り、後は、それぞれが回避行動を取るのが精一杯だった。
その一瞬の隙に、その黒い影は、クチナワをかっさらって、森の奥に奔っていった。
「あかん!逃げよった!」
ちらりと星明かりに見えた黒い影の正体は、巨大な狼のようなフォルムの傷ついた獣。カダマシの変形のひとつ『大口真神』だった。
「逃がすな!追えぃ!!」
左前と大鹿島が一斉に飛び出す。遅れて、瀬良、綾音、ダリ、土御門が走り出した。しかし、手負いとは言え、カダマシの変形の内で最速を誇る『大口真神』だ。追いつける気配はまったくなかった。
あっという間に森の暗闇に溶けてしまう。
「クソ!」
土御門が歯噛みしたときには、すでに、敵の気配は杳として知れなかった。

