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第69章 鎧袖一触（がいしょういっしょく）

まあいい。今度はっと・・・
俺は再び校庭を見る。さっきよりさらに包囲網が縮まっているようだった。

なんで突っ込んでこねえんだ？
そう思ったが、すぐにあゝそうかと思い直す。

人質がいると思ってるのか。
ちらりと後ろを見ると、そこには精液まみれになって転がっている裸の女たちがゴロゴロと転がっていた。

もう・・・人質としての価値があるかわかんねえけどなあ

来ねえんだったら、こっちから行くか。
割れた窓ガラスの桟に手をかけ、ひらりと身体を中空に踊らせる。
身体はより戦闘に特化した『童子』へと変貌する。異形に膨れ上がる筋肉、発達した表情筋は俺の顔を鬼の形相に変えていった。

さあ！思いっきり泣き喚いてくれよ・・・
虫けらども！

☆☆☆
この日、石隠市立加賀屋中学校を襲った謎の男によって、教員８名、男子生徒３２名が負傷、女生徒１３名が極度の身体的侵襲及び性的外傷によるショック症状を呈していた。

そして、駆けつけた警察隊、管区機動隊、特殊部隊の被害はもっと甚大で、１名が額を狙撃され重体、その他、実に４８名が重軽傷を負う事態となった。

死者が出なかったことが何よりの救いと言えるが、男子生徒の内１０名はいまだ集中治療室での治療を要し、女生徒１３名は極度の精神的トラウマによって、長期間の治療が必要である見込みだという。

石川県警捜査一課呪殺班はこの事件を特定怪異事件と認定し、宮内庁陰陽寮に応援を要請した。以降、本件は陰陽寮によって捜査が引き継がれることになった。