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天狐あやかし秘譚
第59章 合縁奇縁(あいえんきえん)

あの最後に見たヤツ、あれが『本体』ですね。
あの女性たちはまだ生きていました。人質がいる以上は迂闊なことはできませんね・・・。
本来は本体を見つけ次第乗り込んでいって、捕縛し、この異界を解除、脱出、ということを想定したのだが、そういうわけにもいかなくなった。
それに、向こうはこちらの術に気づいてしまった。おそらく、私が『違う者』であることにも気づいてしまったと思われる。
さてさて・・・どうしましょうね、とひとりごちする。
本当に困っているわけではなく、これは気持ちを落ち着けるための私なりの方便、といったところだ。
この異界の構造は大体わかる。時間軸はズレていない、というのもわかった。
ただ、この異界が展開している現実世界の『場所』までは特定できない。それを特定するためには、あの『辻神』の群れを抜けて異界の境界に触れなくてはいけない。先ほど『目』が見破られたことから考えると、おそらく目で異界の端に触れるのも難しいだろう。
なら、次の手段は・・・
私は右手の手のひらを上に向け口元に持ってきて、目を閉じる。左手の人差し指と中指で挟んだ呪符をその手のひらに軽く添えるようにする。呪符には五芒星に『魂』と一文字書かれていた。
『陰陽五行 歳星 死門 奇魂勧請』
符に呪力を流し込むと、符と右手首にはめられた二重の木環が反応し薄く光を放つ。それはたちまちのうちに溶け合い、右手の上で混ざり合う。そして光は青白く膨らみ、次第にその形を蝶のそれに変貌させていき、ついには、私の右の手のひらの上にアゲハチョウ程度の大きさの青白い燐光を放つ美しい蝶が生まれた。
私の式神、『夜魂蝶』(やこんちょう)だ。
あの女性たちはまだ生きていました。人質がいる以上は迂闊なことはできませんね・・・。
本来は本体を見つけ次第乗り込んでいって、捕縛し、この異界を解除、脱出、ということを想定したのだが、そういうわけにもいかなくなった。
それに、向こうはこちらの術に気づいてしまった。おそらく、私が『違う者』であることにも気づいてしまったと思われる。
さてさて・・・どうしましょうね、とひとりごちする。
本当に困っているわけではなく、これは気持ちを落ち着けるための私なりの方便、といったところだ。
この異界の構造は大体わかる。時間軸はズレていない、というのもわかった。
ただ、この異界が展開している現実世界の『場所』までは特定できない。それを特定するためには、あの『辻神』の群れを抜けて異界の境界に触れなくてはいけない。先ほど『目』が見破られたことから考えると、おそらく目で異界の端に触れるのも難しいだろう。
なら、次の手段は・・・
私は右手の手のひらを上に向け口元に持ってきて、目を閉じる。左手の人差し指と中指で挟んだ呪符をその手のひらに軽く添えるようにする。呪符には五芒星に『魂』と一文字書かれていた。
『陰陽五行 歳星 死門 奇魂勧請』
符に呪力を流し込むと、符と右手首にはめられた二重の木環が反応し薄く光を放つ。それはたちまちのうちに溶け合い、右手の上で混ざり合う。そして光は青白く膨らみ、次第にその形を蝶のそれに変貌させていき、ついには、私の右の手のひらの上にアゲハチョウ程度の大きさの青白い燐光を放つ美しい蝶が生まれた。
私の式神、『夜魂蝶』(やこんちょう)だ。

