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天狐あやかし秘譚
第123章 籠絡掌握(ろうらくしょうあく)
☆☆☆
キュウウゥウウウウ

記憶の再生が止まった。しかし、今回のそれは、『水有』が意図したことではなかった。

「あれ・・・?どういうこと?」

目の前には『奥の間』に座る水無と水有がいた。
無表情で座っているが、その心の内には様々な思惑が渦を巻いていた。

そう言えば、この頃の私は、いつもお姉ちゃんと競っていた気がする・・・

神宝を探す際も、他の神宝使いが戦っている場面を中継する際も、姉の神宝のほうがどうしても緋紅に重用されているように思えたのだ。

そもそも、姉の方が先に緋紅様に愛されていた。

その思いはどんなに自分が緋紅様に深く愛されたと感じる夜を過ごしても、どこか拭い去ることができないトゲのように感じられた。

緋紅様は最終的には姉を選ぶのではないか。
そんな思いが、浮かんでは消え、消えては浮かんでいた。

なんで、記憶の再生が止まったのだろう。
まだ、姉が隠していることがすべてわかっていないのに・・・

そう持って周囲を見渡すと、水無の持っている沖津鏡がぼんやりと青く光り輝いているのに気づいた。

それは、全てが灰色に沈むはずの夢幻の世界ではありえないことだった。

「そうか・・・時間切れってわけね」

ありえないことが起こった理由。それはひとつだけだった。
辺津鏡と同じ神力を持った沖津鏡が現実サイドから妨害してきたのだ。

それは・・・水無の持つ『現実世界の沖津鏡』が天狐の侵入を検知して発動したことを意味していた。

「時間切れってわけね・・・仕方がない」

『水有』は両手を頭の上に浮かぶ辺津鏡に掲げると、夢幻に立ち入るその力を鏡の中に収めていく。まるで世界がビデオの逆回しのように辺津鏡の歪んだ闇に吸い込まれていき、最後には水有の手に鏡ごとぽとりと収まった。

そこは再び元の測候所跡の一室に戻っていた。
壁際の簡易ベットでは水無・・・スクセの姿が、先ほどと変わらぬままの姿で寝入っていた。

そして、案の定、机の上にある沖津鏡が青く鈍い光を上げていた。その光が広がり、辺津鏡の力を阻害していく。辺津鏡の力で眠らせていた姉が目を覚まそうとしていた。

「仕方がない・・・お姉ちゃんがどうしようとしているか・・・もう少し近くで見させてもらうことにするわ」

ふふふふふ・・・
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