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天狐あやかし秘譚
第117章 献身奉仕(けんしんほうし)
☆☆☆
『鏡を使って未来を覗く』

そう心に決めたとは言え、私はその鏡を直接見たことがなかった。大きさも形も、どこにあるかさえ知らされていなかったのだ。

しかし、チャンスは意外にも早く訪れた。その態度から、父が『鏡』の在り処を知っていると踏んでいた私は、父の動向をずっと気にしていた。その結果、父が何度か、普段家のものが出入りしない北東の角にある倉庫に行く姿を目にすることになった。

暮れも押し迫ったある日の夜。家人が寝静まったのを確認した私は、こっそりと起き出して例の倉庫に向かった。建付けの悪い扉を苦労して開き、懐中電灯で中を照らす。

棚がたくさん並んでおり、そこに中身がよくわからない段ボール箱や木箱、古そうな本やガラクタめいたものがところ狭しと置かれていた。

目当てのものがどこだろうとあちこち懐中電灯で照らしている内に、気がつくことがあった。誰も入ることのない倉庫は薄っすらとホコリが積もっているが、懐中電灯の光で照らすと、ホコリがないところとあるところがよく見えるのである。床を照らせば真新しい足跡も見つけることができた。

父の・・・足跡かもしれない。

私は慎重にそれを辿った。足跡は入口から入って少ししてから左に折れ、突き当りの棚の前で止まっていた。その正面の棚を照らしてみる。

案の定、そこにあったいくつかの箱の中に、ひとつだけホコリがきれいに取り除かれた木箱を見つけることができた。木箱は正確にはひとつ、ではなく、二つが重ねられており、古びた組み紐で結わえられていた。大きさは縦横25センチほど、高さはそれぞれ10センチほどだった。箱の側面にはなにか墨字で書かれたような跡があったが、かすれてしまってそれを読むことはできなかった。

もしかしてこれが・・・?

震える手で私はいったん箱を元の場所に置き、部屋の外をうかがった。

大丈夫、誰もいない・・・。

再び倉庫に戻った私は、もう一度箱に手をかける。
ゴクリと息を呑んだ。

ババの言葉が、一瞬、頭を過った。

『先を見るいうことは、本来人に許されへん恐ろしいことや』
『ゆめゆめババの言葉を忘れんでくれ』

ドッキン、ドッキンと心臓が激しく打った。
いけないことをしようとしているのはよく分かっていた。
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