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天狐あやかし秘譚
第117章 献身奉仕(けんしんほうし)
「昔から藤塚家に伝わる二枚の鏡があるんだって。すごい貴重らしいよ。いつかお前たちが受け継ぐことになるからって」

私もその場にいたはず、と言うけれど、私はさっぱり覚えていなかった。

「その鏡を売ったお金で選挙で勝てってことかな?」
「どうだろう?」

更に耳を傾けると、父が困惑した様子で話している様子が聞こえた。

『鏡はキンキだ』とか
『他の方法は?』だとか

どうも知人の男は、その鏡を覗き込めと言っているらしい。そうすれば・・・え?

『未来がわかるから』

そこだけはハッキリ聞こえた。私は水有と顔を見合わせた。そんな事があるだろうか?未来が見える鏡・・・そんなSFみたいな話が?

そこまで聞いたところで知人の男が帰る様子がうかがえたので、私たちは慌ててその場を離れることになった。

部屋に戻って水有と話す。

「さっきの話・・・」
「うん、変なこと言ってたね、あの男の人」
「鏡・・・水有は見たことある?」
「ない」
「私もないんだけど・・・どこにあるんだろう?」
「探すの?」
「だって、未来がわかるんだったらお父さんが当選するかとかもわかるってことでしょ?」
「でも・・・」

水有は躊躇しているようだったけれども、私は妙な使命感にかられていた。お父さんやお母さん、水有を守れるのは自分しかいない、そんなふうに思っていたのだ。

「ババに聞いてみよう」
「う・・・うん」

次の日、ババに鏡のことをそれとなく聞いてみることにしたのだ。父や母、ジジがいない時を見計らったのは、子ども心にこれがいけないことだと勘づいていたからかもしれない。

「ババ、前に言ってた鏡のことだけど」
私が切り出すと、いつもニコニコとしているババの表情が曇った。
「それってどんな鏡なの?」
それでも私はなおも尋ねていた。一緒に来てくれた水有は隣でじっと黙ったままだった。

「ああ・・・あれはな、前にも言うたが、藤塚の家に代々伝わっとる、そりゃ貴重なもんや。本来やったら位の高い神社におさまっとるべきもんやけど、この家のもんしか扱えへんさかい、ずっと昔からこの家で受け継いどんのや。」

不審そうにしながらもババは一応話をし始めた。ただ、この話は水有が覚えているのと同じものだったので、あまり参考にはならなかった。聞きたいのはそこじゃない。
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