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天狐あやかし秘譚
第116章 疑心暗鬼(ぎしんあんき)
その服装は、彼女の少し幼く見える顔に対して不釣り合いなほどにセクシーだった。

緋紅は彼女を認知した途端、何か汚らわしいものを見るかのような視線を向けていた。普段、めったに人前で本当の感情を露わにしない彼としては珍しい行いだと言える。

「あれ?・・・もしかして、ボクの今日のファッション、気に入らなかった?こういうの好きじゃない?緋紅さまはさ」

『さま』という言葉に若干のアクセントを置いた感じが、なにやらイヤミっぽい。それを感じたのか、緋紅の眉間に皺が寄る。

「誰が着るかによるよ・・・何の用だい?オキナ」

どうやらオキナというのが彼女の名前のようだ。オキナはひょいと肩をすくめた。

「ひどい言いよう。用がないと来ちゃいけないの?ボクさ、緋紅さまが困ってるんじゃないかって思って来たんだよ?」

クスクスっと笑っていた。

「別に困っていない。計画は順調だ・・・オキナが出張る必要もない。」
「順調ねえ・・・あの双子焚き付けて、今度は何、企んでるわけ?」
「お前には関係ない」
「ちぇ・・・つまんないの。スクセ、だっけ?双子の片割れに緋紅さまの大事な神宝まで貸し出して・・・でも、あれじゃん?あの子、適合してないよね?」

しつこく話しかけてくるオキナに緋紅が小さく舌打ちをする。

「あ、そうか!適合してないこと、彼女も承知ってことか?
 うまくやったよねぇ・・・緋紅さま。確かにあれ使えば、人間であっても天狐を殺せるかもだしね。ふふふ・・・一体どうやったのさ、教えてよ、ボクにもさ」
「それをわざわざ教えてやる義理も義務ももうないだろ。用があればこっちから声をかけるから、引っ込んでてくれないか?オキナ」
「ふーん、そなの?じゃあさ、じゃあ、ほら『お勤め』?ボクしてあげようか?だってほら、あの双子がいないと暇も身体も持て余してるでしょ?」

右手の人差し指と親指で輪っかを作って、口元に持っていき、舌を出して見せる。フェラチオを示唆しているようだった。

「何度も言わせるなよ。下がれ・・・貴様がヤリたいだけだろ?下から女を連れてけばいい・・・それとも男がいいか?」
ブワッと全身から冷たい殺気を迸らせる。それを感じたのか感じていないのか、オキナは舌を出したままふざけたように半眼になる。
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