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天狐あやかし秘譚
第116章 疑心暗鬼(ぎしんあんき)
水有の目の前には、鞍馬山に入り込んだ二人の陰陽師が意識を失った状態で倒れていた。辺津鏡から得た情報によると、三つ揃えのスーツを着ている方は『宝生前桐人』、パンクファッションの方は『御九里牙城』というらしい。

興味ないけど。

姉であるスクセが陰陽師や天狐を討伐すると言い出したのが1ヶ月ほど前だった。緋紅に進言し、その作戦が認められ、姉は単独で屋敷を出る許可を得た。そしてつい先日、その姉が緋紅に『陰陽師たち・・・そして、緋紅様の計画を邪魔する天狐を殺す算段ができました』と言ってきたのだ。

彼女はひとりでやると言ったが、その場にいた水有もまた緋紅に願い出たのだ。
『姉を助けたいから、私にも手伝わせてほしい』と。

その時、スクセは確かに複雑な顔をした。しかし、この場は水有ーキヌギヌーの作戦勝ちだった。緋紅から『キヌギヌにも手伝ってもらいなよ』と言われては、スクセに断る術はないからだ。

スクセは本音のところではこの計画をひとりで進めたいに違いなかった。実際、先程の電話でも、今、水有の足元に転がっている二人の陰陽師を自分のところに送り届けたら『屋敷』に帰れと、そう言ってきたのだ。

スクセは水有をこの作戦からできるだけ遠ざけようとしている。

「ま、そんな事はわかってるんだけど・・・ね」
独り言のように言った水有は、そっと目を細めた。
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