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天狐あやかし秘譚
第114章 天道是非(てんどうぜひ)
☆☆☆
「ば・・・バカ野郎!んなわけあるか!」
御九里が声を上げる。
その声で私はハッと我に返った。

「御九里さん・・・なにか、疑義がありますか?」
「あるよある!大アリだ!・・・じゃあ、なにか?遠くも未来も見える沖津鏡を使えば、俺達陰陽寮を全滅させることだって可能じゃねえか!だったら、なんであいつらはそれをしねえ?」

御九里が言おうとしていることはわかる。
確かに、『どんなところでも見通せて』、『そこに自分が望んだ未来』を自由に確定できるなら、ほぼ無敵の神宝だと言える。

「それについては、正直わかりません。
 何らかの束縛条件があるのかもしれません。人間には過ぎた力ですから・・・、使う際になにか難しい条件があるとか、異常なほどのエネルギー消費があるとか。
 いずれにせよ『さすがに天狐は『視えないか』』というセリフから察するに、相手が保有している力が大きいとうまく未来を確定できない・・・つまり視ることができないという制限はありそうです。」

つまり、スクセが今にも陰陽寮全滅を図らない理由は、単純に力の強い人は殺せないから・・・ということになる。

ちょ・・・ちょっと待って!
そんなこと言ったら!?

私は御九里の方に顔を向けた。
案の定、御九里が唇を噛んで青い顔をしていた。

「わ、私はだ、大丈夫だから!」
慌てて言ってみたけど、こっちも声が震えているので無理をしているのが丸わかりだった。

そりゃ気にするだろうな・・・。実質、御九里の一言で私はスクセに対峙することにしたわけだし、力がないから『死の未来を視られてしまった』となれば、御九里の立つ瀬がない。

「なにか、回避する方法はないのでしょうか?」
若干、場が浮足立ったのを感じたのかもしれない。宝生前がことさら落ち着いた口調で高森に尋ねた。

「・・・現時点ではなんとも・・・。ただ、理由はどうあれ、敵は沖津鏡の力を無尽蔵には使えないということだけは確かです。そして、もう一つ、沖津鏡には明確な弱点があると思われます。」
「それは・・・?」
「もし、沖津鏡が無限定に広範囲の場所や時間も遠見することができるなら、それこそ無敵の神宝です。しかし、おそらく現実的にはそうではないのだと思います・・・その制限のひとつとして考えられるのが使用者の認知的キャパシティです」
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