この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
天狐あやかし秘譚
第111章 真実無妄(しんじつむもう)
♡ーーーーー♡
【真実無妄】間違いや嘘ではない、本当のこと。
これぞ間違いがない真実・・・真実はいつも、ひとつ!みたいな。
♡ーーーーー♡
【7月25日(金)午後11時38分】
月のない闇夜。いかな恐山とは言え、梅雨も明けたこの時期では、宵闇の空気の中にもまだ薄っすらと昼間の熱をとどめていた。
そんなとうに閉山をしているはずの山中に、動くふたつの影があった。
影たちは闇の中の一点を睨みながら、ひそひそと言葉を交わしていた。
「代償は、これを開くこと・・・。それだけで間違いないわね?」
「ああ、そうだ」
その返事を受けて、片方の影の主が手を虚空に向かって伸ばす。
その手のひらに禍々しい陰の気がわだかまっていく。もし、ここにその光景を見る人がいれば、あたかもそこだけ宵闇がドロリと濃く淀んでいくようにも見えただろう。
手のひらの中の闇は互いに絡みつき、ねじれあい、そして膨らんでいく。複雑に絡み合ったそれは、生き物のようにうねり始め、ついには幾重もの不気味な暗黒の触手を空間に伸ばし始める。
すると、今度はそれに呼応するかのように空間の一点がぐにゃりと歪み始めた。最初は小さかったそれは徐々にその濃度を増していく。それに伴い、奇妙な気配が辺り一面に満ちていった。
この気配のことを術者たちは瘴気と呼ぶ。
そして、この歪んだ空間こそが『冥穴』なのだ。
「それ以上は、やめてください」
不意に背後から声をかけられ、二つの影が動揺した。
声の主は山を駆け上がってきたのかもしれない。手に懐中電灯を持ち、少し肩で息をしているようだった。
それでも凛とした声を闇夜に響かせる。
「そうだったんですね・・・。
鬼はやはり一体だけじゃなかった。」
男が懐中電灯を2つの影に差し向けると、ぱっと白い光が暗闇を穿った。
そこにいたのは一人の女性・・・そして男性だった。
「あなたもまた『鬼』の血を引いていたんですね?
・・・大武和羽さん」
進み出た男、懐中電灯を持ったその人物は、西園寺だった。
光に照らされた和羽が、ゆっくりと彼の方に向き直る。そして、空気の匂いを嗅ぐかのように目を閉じて少し深く息を吸った。
「お帰りになったんじゃなかったんですか?
刑事さん・・・いや、陰陽師・・・かしら?」
西園寺が小さく嘆息した。
【真実無妄】間違いや嘘ではない、本当のこと。
これぞ間違いがない真実・・・真実はいつも、ひとつ!みたいな。
♡ーーーーー♡
【7月25日(金)午後11時38分】
月のない闇夜。いかな恐山とは言え、梅雨も明けたこの時期では、宵闇の空気の中にもまだ薄っすらと昼間の熱をとどめていた。
そんなとうに閉山をしているはずの山中に、動くふたつの影があった。
影たちは闇の中の一点を睨みながら、ひそひそと言葉を交わしていた。
「代償は、これを開くこと・・・。それだけで間違いないわね?」
「ああ、そうだ」
その返事を受けて、片方の影の主が手を虚空に向かって伸ばす。
その手のひらに禍々しい陰の気がわだかまっていく。もし、ここにその光景を見る人がいれば、あたかもそこだけ宵闇がドロリと濃く淀んでいくようにも見えただろう。
手のひらの中の闇は互いに絡みつき、ねじれあい、そして膨らんでいく。複雑に絡み合ったそれは、生き物のようにうねり始め、ついには幾重もの不気味な暗黒の触手を空間に伸ばし始める。
すると、今度はそれに呼応するかのように空間の一点がぐにゃりと歪み始めた。最初は小さかったそれは徐々にその濃度を増していく。それに伴い、奇妙な気配が辺り一面に満ちていった。
この気配のことを術者たちは瘴気と呼ぶ。
そして、この歪んだ空間こそが『冥穴』なのだ。
「それ以上は、やめてください」
不意に背後から声をかけられ、二つの影が動揺した。
声の主は山を駆け上がってきたのかもしれない。手に懐中電灯を持ち、少し肩で息をしているようだった。
それでも凛とした声を闇夜に響かせる。
「そうだったんですね・・・。
鬼はやはり一体だけじゃなかった。」
男が懐中電灯を2つの影に差し向けると、ぱっと白い光が暗闇を穿った。
そこにいたのは一人の女性・・・そして男性だった。
「あなたもまた『鬼』の血を引いていたんですね?
・・・大武和羽さん」
進み出た男、懐中電灯を持ったその人物は、西園寺だった。
光に照らされた和羽が、ゆっくりと彼の方に向き直る。そして、空気の匂いを嗅ぐかのように目を閉じて少し深く息を吸った。
「お帰りになったんじゃなかったんですか?
刑事さん・・・いや、陰陽師・・・かしら?」
西園寺が小さく嘆息した。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


