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天狐あやかし秘譚
第110章 機略縦横(きりゃくじゅうおう)
☆☆☆
「えっと、あの・・・その・・・」
一通り大武家の事を聞き終えた私は、最後の疑問を口にしていいかどうか迷っていた。好奇心はある。でも、聞いていいものかどうか・・・。

「吾嬬さんのことだよね?」
 それを察してくれたのか西園寺様が話題を引き継いでくれた。

「僕も詳しくは知らないけど、陰陽寮陰陽部門に八咫烏って組織があるのは知ってるよね?」

もちろん知ってる。
陰陽寮には陰陽、天文、暦、漏刻の4つの部門があり、それぞれの下に4つの衆がある。

陰陽部門の下には、
西園寺様が所属する、主に退魔を生業とする『祓衆』
私が所属する祭祀や結界術を生業とする『祭部衆』
調査や占術、呪術開発を生業とする『占部衆』
そして、諜報や隠密活動・・・果ては暗殺すら生業とすると言われている『八咫烏』
この4つの組織がある。

「吾嬬さんはどうやら八咫烏の『属の四位』らしい。
 大武エレクトロンには1年前から朔弥の秘書として潜伏し、何らかの調査をしていたようだ・・・ま、これ以上詳しいことは僕にもわかんないんだけどね」

ひょいと西園寺様が肩をすくめた。

「とにかく、彼女には助けられたけど、報告書には書かなくて正解だね。
 あっちにはあっちの仕事があるだろうから」

昨夜、吾嬬は時弥に何かを尋ねていた。時弥は首を振っていた。
吾嬬が知りたいことを時弥は知らなかったのだろうか?

「今朝、吾嬬さんは大武エレクトロンに辞表を提出したみたいだ。
 朔弥は大変取り乱したらしい」

・・・?秘書がやめたくらいで?

私の顔に疑問符が浮かんでいたのだろう。
ニヤッと笑った西園寺様が、ハートのエースをスペードのエースと重ねた。

「諜報活動の基本だ・・・朔弥は吾嬬さんにどっぷりハメられていたらしい。
 かわいい顔して、3つの顔を持ってたんだよね、彼女」

ひとつは、愛らしい無垢な秘書の姿
ひとつは、男を愛欲に惑わせるの娼婦の姿
そして・・・猛烈な呪力を持つ、鬼神の如き姿

「女は怖い・・・
 今朝も『私の邪魔をしたことは忘れないわ』とラインがきたよ
 このラインだって、いつの間にID知ったんだって感じだよ」

ぐっと西園寺様が伸びをする。
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