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天狐あやかし秘譚
第74章 比翼之鳥(ひよくのとり)

☆☆☆
「綾音はんたちは?」
「山側のお部屋の方で一緒に寝ている・・・みたいです」
二人掛けのソファに腰掛けて、土御門が指を組んでいる。口調は軽いが、表情はやはり険しい。同じ部屋で麻衣が簡易ベッドで寝息を立てている。子供の眠りだからだろうか、とても深いようで、土御門と瀬良が喋っていても起きる気配はまったくない。
「『補給』できたんかいな?」
「ええ多分」
『補給』とはダリと綾音がエッチをしたか、ということの確認だろう。細かく言えば違うらしいのだが、ダリは綾音との性交により、その妖力を『回復』させているということだ。問われたので答えたものの、瀬良としては覗いたわけでも聞き耳を立てたわけでもない。同じ部屋に愛し合っている男女がいる・・・だから『多分』、そういう事をしたのだろう、と考えたに過ぎない。
瀬良の言葉に『さよか』と返事を返した土御門は、その肩に愛用の将軍剣をもたれさせたままだ。いつでも出撃できるよう、準備をしているように見える。そもそも、麻衣が寝ているこの部屋には電気の配線が来ていない。その中で、横になることもせずにじっと土御門は何事かを考えていた。
「土御門様もお休みください。次の夜を決戦の時と・・・考えているのでしょう?」
あなただって、疲れているはず・・・ですよね?
瀬良は思う。必要であれば『お勤め』も辞さないのだが、今日に限って、土御門は瀬良を求めては来なかった。
「土門はん達は?」
「それぞれお休みになっています」
それに対しても『そか』と一言のみだった。そして、彼は窓から視線を外にやった。
「ざわつくんよね」
「何が・・・ですか?」
「確かに、わいの考えでは、敵が動くのは新月の夜。おそらく、『緋紅』がカダマシの持ち帰った死返玉をつこて黄泉平坂を開く・・・。これは間違いないというか、それしかないと思うんよ。ただな、敵さんは今までいつもこっちの上を行っている。なんか見逃しがないかな・・・ってな」
確かに『まつろわぬ民』には、これまで何度も出し抜かれている。彼らの戦力も十分に分析できていない。それは向こうもだろうが、こちらの手の内は繰り返される襲撃の中で徐々に見透かされている可能性が高い。それを考えると、防衛戦である以上、長引くほど不利になるのはこちらだ。
「綾音はんたちは?」
「山側のお部屋の方で一緒に寝ている・・・みたいです」
二人掛けのソファに腰掛けて、土御門が指を組んでいる。口調は軽いが、表情はやはり険しい。同じ部屋で麻衣が簡易ベッドで寝息を立てている。子供の眠りだからだろうか、とても深いようで、土御門と瀬良が喋っていても起きる気配はまったくない。
「『補給』できたんかいな?」
「ええ多分」
『補給』とはダリと綾音がエッチをしたか、ということの確認だろう。細かく言えば違うらしいのだが、ダリは綾音との性交により、その妖力を『回復』させているということだ。問われたので答えたものの、瀬良としては覗いたわけでも聞き耳を立てたわけでもない。同じ部屋に愛し合っている男女がいる・・・だから『多分』、そういう事をしたのだろう、と考えたに過ぎない。
瀬良の言葉に『さよか』と返事を返した土御門は、その肩に愛用の将軍剣をもたれさせたままだ。いつでも出撃できるよう、準備をしているように見える。そもそも、麻衣が寝ているこの部屋には電気の配線が来ていない。その中で、横になることもせずにじっと土御門は何事かを考えていた。
「土御門様もお休みください。次の夜を決戦の時と・・・考えているのでしょう?」
あなただって、疲れているはず・・・ですよね?
瀬良は思う。必要であれば『お勤め』も辞さないのだが、今日に限って、土御門は瀬良を求めては来なかった。
「土門はん達は?」
「それぞれお休みになっています」
それに対しても『そか』と一言のみだった。そして、彼は窓から視線を外にやった。
「ざわつくんよね」
「何が・・・ですか?」
「確かに、わいの考えでは、敵が動くのは新月の夜。おそらく、『緋紅』がカダマシの持ち帰った死返玉をつこて黄泉平坂を開く・・・。これは間違いないというか、それしかないと思うんよ。ただな、敵さんは今までいつもこっちの上を行っている。なんか見逃しがないかな・・・ってな」
確かに『まつろわぬ民』には、これまで何度も出し抜かれている。彼らの戦力も十分に分析できていない。それは向こうもだろうが、こちらの手の内は繰り返される襲撃の中で徐々に見透かされている可能性が高い。それを考えると、防衛戦である以上、長引くほど不利になるのはこちらだ。

