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ママ活
第9章 《最終章》病める時も健やかなる時も、ママと


「もう吹っきれてます、佐和子さん」


 明咲は佐和子の腕に手を預ける。


「自分なんて誰にも愛されないんだって、思ってました。佐和子さんとの関係が、実は心地良かったし」

「私は愛していたけどね、貴女の身体」


 軽い調子で佐和子が笑った。


「そんな佐和子さんのお陰で、ちゃんと、自信が持てました。でも、お姉さまとは終わりました」

「本当に、愛してるの?小川さんを」

「私を自由にしてくれた人。それがお姉さまだったし、……このままで良いと気付かせてくれたのは、小川ちゃんでしたから」


 そして佐和子は、仕事を選んだ。ゆうとはもちろん、気が向けば、きっと宮田の話していた通り、また夜の街へ繰り出したりもするのだろう。
 亜純も断念した希望を取り戻した。彼女は、肉欲ではそれを満たせない。かつて目指した未来を埋め合わせて、初めて完璧になる。

 
「佐和子さんこそ、お姉さまは──…」

「別れた方が、私達の欲望には都合が良い」


 明咲から腕をほどいた佐和子が、身をひるがえしてステップを踏む。
 正面に回り込んでくると、かつて何度もそうしたように、明咲の手首を自然にとった。


「お互いどこまで高みへ行けるか。願掛けで、ケジメでもあった」


 戻りましょう、と来た道を踏み出した佐和子に、明咲も続く。


 佐和子や亜純ほどの志や夢はない。

 それでも明咲は幸せになりたい。躊躇いも、今はない。


「佐和子さん」

「なぁに、酔った?」


 まさか、と明咲は笑う。佐和子の片手を握り返して。


「ありがとうございます。これからも、社員としてお世話になります!」


 病める時も健やかなる時も、きっと彼女の側を離れられない。

 彼女のものにはなれなくても、同じ未来の眺めは望める。力になりたい。



 幸福は、かたちを持たない。犠牲や踏み台なしでは成り立たないかも知れない。

 だがそればかりではない。

 きららかな思いが叶える未来も、きっと愛おしい。








──fin.
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