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ママ活
第8章 推しのママに宣戦布告?!


 何度、りなは果てただろう。
 一切の不純物もない信頼を超えた感情を亜純に向けて、シーツの皺を深めていく。
 情欲のヴェールをまとったいじらしい姿に何度、亜純も気を遣ったことか。

 むせかえるほどの甘い匂いが、部屋を満ちた。
 亜純はりなから首輪を外して、ブランケットで汗を拭った。


 歌を生きた証にしようとしていた過去は、本物だ。
 だがあの世界を離れても、亜純は生きている。

 かつての亜純の残像に、幻想を重ねている社員達。彼女らの失望を招いても、亜純はやはり生き続けられるだろう。
 人間の心の移ろいやすさには、慣れている。



 うたた寝から目覚めると、明朝、時刻は五時を過ぎていた。

 しばらく朝日を眺めていた。
 すると、シーツの膨らみがもぞもぞ動いた。

 可愛らしい部屋着にカーディガンを羽織ったりなが起き抜けてきて、亜純の隣に足をとめた。


「綺麗……」


 亜純は、おそらくりなに向けて呟いた。

 朝日が、乳白色をとかした塩水の群青を輝かせていく。
 世界が、徐々に照らされていく。


「美しいものを美しいと言える。亜純さんの方が、私からしたら綺麗です」


 平常運転だ、と亜純は思った。りなほど他人を妄信出来る人間が、他に存在するのだろうか。

 りなの腰に腕を伸ばして、夜明けの肌寒さを彼女の体温でしのぎながら、亜純は彼女の人となりを思う。

 たとえ世界が亜純を見放したとしても、彼女は肯定し続けてくれるのではないか。
 明咲との時間に、佐和子の孤独──…それらでさえ、不変だとは言いきれないのに。
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