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千一夜
第61章 第八夜 island 真相
 河田は容赦しない。
 私がどんなに乱れようが、私が私でなくなろうが、河田は自分を満足させるために指を動かす。河田は私の料理法を知っている。俎板の鯉とはよく言ったものだ。私に逃げ場はない。
 河田の人差し指が私の中でぐるぐる回る。ん……いつの間にか中指も人差し指に重なって私の中で性の奉仕を始めていた。
「ここ気持ちいいんだよな?」
「……」
「もっと気持ちよくなりたいだろ?」
「……」
 はい、とは言えない。でも河田が次に何を仕掛けてくるのかはわかる。私はそれに備える。
「ふん」
 河田のその声が合図だった。
「ダメー!」
 河田の人差し指と中指の仕事のせいではない。私の中に入り込むことが許されなかった(あるいはわざと外で待ってたかもしれない)親指が動き始めたのだ。
 河田の親指が女の突起物を摩り始めたのだ。
 同性にはわかってもらえるはずだ。軽く触れられただけでも、女の体は一瞬で硬直する。次の瞬間、快楽の底にすとんと落とされる。だが私は抗う。這い上がろうとして、つまり快楽から逃れようとして私は抵抗する。
 河田の手の動きを止めるために体を揺さぶったり、腰をねじらせたり、私は私ができることで性の神様に逆らう……。
 嘘だ。私は逆らうふりをしているだけだ。男だって女だってエクスタシーを完全に拒むことはできない。
 河田の親指の動きが強くなる。
「ダメダメ!止めて!」
「本当に止めていいのか?」
「……」
 私は答える代わりに、枕で自分の顔を覆った。快感の波に溺れる自分の顔を河田には見られたくない。
「麗子がこんないスケベだったなんて僕は知らなかったよ。僕は喜ぶべきなんだろうか? それとも自分の妻が淫乱で悲しむべきなんだろうか? 麗子、教えてくれないか?」
 河田はどんな顔をして私にそう訊ねるているのだろうか。残念ながら河田を窺うことはできない。しかし何となく予想はつく。
 河田は薄っすら笑っている。私を征服したことに満足しているはずだ。冷たく響く河田の言葉の中に、私はそれを感じる。
「……」
 河田の手が休まない限り、私の体は静止しない。小刻みに動いたり、激しく揺れたり。私の体を操縦しているのは河田だ。
 悔しいが(歓迎すべきなのかもしれない)、河田の操縦は完璧だった。
 私の夫河田良和は、私の体の隅から隅までを知り尽くしている。
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