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千一夜
第59章 第八夜 island 違和感
断っておくが、河田が私に手を上げたことは一度もない。人を威圧する言葉も使わないし、家庭内で起きるモラハラもなし。
それどころか河田は時間があれば、私の仕事を積極的に手伝う。掃除洗濯、食事の後片付け(さすがに理料理を作ることはしないが)。それだって河田は自分から進んでやるのだ。
週末は外で食事をするし、月に一度伊豆や箱根の温泉に向かう。そして年に二度、夏と冬に長期の休暇をとって海外に出かける。
忘れてはいけないことがまだある。我が家には二つの記念日があるのだ。それは私の誕生日と私たちが初めて鎌倉でデートをした日。
記念日には出張料理人が我が家に来て料理をする。フレンチのときもあれば、イタリアンのときもある。そして今年は銀座の高級寿司店から寿司を握るために職人が我が家に来た。
結婚して最初の私の誕生日、河田から渡されたプレゼントの箱を開けた瞬間、私は気を失いそうになった。ショパールの腕時計。この時計一本でメルセデスベンツが余裕で買える。
「気に入ってもらえるといいんだけど」
プレゼントを私に渡すとき、河田はそう言った。
「きっとその時計は素敵な時間を麗子に運んでくれるよ」
プレゼントを開けた私の耳に河田の声が届いた。
私は河田に愛されている。私は幸せだ。不満なんて一つもない。
河田は自分の意見を押し付けない。だから私は一戸建てではなく、タワマンを選んだのだ。正直言って私は人付き合いが苦手だ。一戸建てに住んで隣近所と上手くやっていく自信がない。
だったら黙っていればいいじゃないかという人がいる。しかし、ずっと黙っているわけにはいなかい。しゃべり過ぎれば「あの家の人話が長いのよね」と言われる。遠くの親戚より近くの他人ということわざがあるが、それをそのまま鵜吞みにすることはできない。
もちろんタワマンに住んでも煩わしさが消えるわけではない。でも私は人間関係が希薄のままでいられる(希望的観測)タワマンを選んだのだ。
そのとき、私は河田にこうリクエストした。
「できれば海が見えるところがいいな」と。
これはのろけ話ではない。私が話したことはすべて事実なのだ。
自分の夫が、スイスのプライベートバンクに口座を持っている人なんてそんなにいないだろう。でも私の夫河田良和は口座を持っている。
だが……だが、その夫がある瞬間豹変するのだ。
それどころか河田は時間があれば、私の仕事を積極的に手伝う。掃除洗濯、食事の後片付け(さすがに理料理を作ることはしないが)。それだって河田は自分から進んでやるのだ。
週末は外で食事をするし、月に一度伊豆や箱根の温泉に向かう。そして年に二度、夏と冬に長期の休暇をとって海外に出かける。
忘れてはいけないことがまだある。我が家には二つの記念日があるのだ。それは私の誕生日と私たちが初めて鎌倉でデートをした日。
記念日には出張料理人が我が家に来て料理をする。フレンチのときもあれば、イタリアンのときもある。そして今年は銀座の高級寿司店から寿司を握るために職人が我が家に来た。
結婚して最初の私の誕生日、河田から渡されたプレゼントの箱を開けた瞬間、私は気を失いそうになった。ショパールの腕時計。この時計一本でメルセデスベンツが余裕で買える。
「気に入ってもらえるといいんだけど」
プレゼントを私に渡すとき、河田はそう言った。
「きっとその時計は素敵な時間を麗子に運んでくれるよ」
プレゼントを開けた私の耳に河田の声が届いた。
私は河田に愛されている。私は幸せだ。不満なんて一つもない。
河田は自分の意見を押し付けない。だから私は一戸建てではなく、タワマンを選んだのだ。正直言って私は人付き合いが苦手だ。一戸建てに住んで隣近所と上手くやっていく自信がない。
だったら黙っていればいいじゃないかという人がいる。しかし、ずっと黙っているわけにはいなかい。しゃべり過ぎれば「あの家の人話が長いのよね」と言われる。遠くの親戚より近くの他人ということわざがあるが、それをそのまま鵜吞みにすることはできない。
もちろんタワマンに住んでも煩わしさが消えるわけではない。でも私は人間関係が希薄のままでいられる(希望的観測)タワマンを選んだのだ。
そのとき、私は河田にこうリクエストした。
「できれば海が見えるところがいいな」と。
これはのろけ話ではない。私が話したことはすべて事実なのだ。
自分の夫が、スイスのプライベートバンクに口座を持っている人なんてそんなにいないだろう。でも私の夫河田良和は口座を持っている。
だが……だが、その夫がある瞬間豹変するのだ。

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