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第16章 午前11時、濡れたシャツの奥で

すると、後ろから彼が慌てて走ってきた。

「待って！」

腕を掴まれ、交差点の真ん中で彼は急いで傘を広げて、私の上に差してくれた。

「俺、家が近いから、すぐに乾かせるし。」

その言葉に、胸がドキッとした。雨の冷たさの中、その優しさだけが不思議と温かかった。

「こんなに濡れて、寒いでしょ。」

彼はハンカチを取り出して、私の頬の水滴を優しく拭ってくれた。

「そうだ。俺の家で服、乾かしましょう。」

突然の提案に戸惑ったけど、なぜか私はうなずいていた。

まだ知らない彼なのに、なぜか信頼してしまう自分に驚きながら、私は彼の後ろをついて歩き始めた。