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熱帯夜に溺れる
第4章 酔芙蓉の吐息
「新人でも雇ってくれるの?」
{当たり前よ。誰だって最初は新人なのよ。むしろ私は新人が経験を積む場所としてサロンを提供したいと思っているの。だから莉子ちゃんを誘ったのよ}

 新人が経験を積む場を作りたい──、伯母の理念が莉子の心を激しく揺さぶる。お前なんかいらないと、お祈りメールの向こう側で吐き捨てられる無言の拒絶の連続に就活へのモチベーションも下がっていた。

 このチャンスを逃せばネイリストの夢を手放してしまいそうで、必ずこのチャンスを掴み取らなければと、今の莉子の頭には恋や愛の単語は吹き飛んでいた。
 もちろん返事はイエスの一択だ。それが後々、どういう意味を持つかなど考えずに。

{今月に一度そっちに帰るから、莉子ちゃんの現在の技術がわかるようなネイルの作品をひとつ作ってその時に見せてちょうだい。それが面接代わりよ}
「作品のテーマはある?」
{そうねぇ……莉子ちゃんもハタチだから、成人式のネイルでどう?}
「わかった! 頑張って作ってみる」

 東京はいつか行ってみたいと思っていた憧れの場所。東京のネイルサロンに採用された同級生の松川七菜に嫉妬の感情は湧かなかったと知咲の前では強がっていたが、あれは半分は嘘だ。

 嫉妬とは、同レベルの者同士に発生する負の感情だと莉子は思っている。あまりにも成績のレベルが違いすぎたり、あまりにも容姿の整い方が違いすぎれば、嫉妬すら抱かない。
 あちらとこちらが同レベルだと思うから、アイツには負けたくない、どうしてアイツが……と、負の感情に蝕まれるのだ。

 だから自分とネイルの技術やセンスが段違いの松川七菜には、羨望はあっても嫉妬なんて……そう、思っていた。
 羨ましいの感情にかすかに混ざる黒い心を莉子は見ないフリをしていたのだ。

 これで松川七菜と同じラインに立てるとは思っていない。ネイルコースの教師にも正直に、伯母からの誘いだと言うつもりだ。

 親戚のコネであれば七菜のように掲示板への名前の張り出しの特別扱いもされないだろう。
 その方が気楽である。同級生達の嫉妬の渦に巻き込まれるのは勘弁したい。
 松川七菜も掲示板への内定決定の張り出し以降は嫉妬に狂った同級生から陰口を叩かれたりしている。優秀な人も大変である。
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