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爛れる月面
第3章 広がる沙漠
 両方の足裏を底に踏ませ、少しずつ身を浸けていく。バストが隠れるまで入ると、湯を櫂いて井上のいる縁とは反対側へと身を泳がせようとしたが、後ろから絡みつかれた。

「そんな遠くに行ってどうする」
「痛いって。見とれて興奮すんのはしょうがないけど、乱暴にしないで」

 言いながらも、紅美子は抗いなく引き寄せられ、井上の脚の間に収まった。まだ洗い落ちてはいないらしく、香水の混ざる湿気の中へと凭れかかる。さっそく湯の中で、両手がバストへとかかり、揉みほぐしてきた。既に硬くなっていた乳首を指間に挟まれると、紅美子は途切れ途切れの嘆息を漏らし、いま少し湯の中へと沈んだ。

「……ねえ」

 水面の小波が次々と変える模様を眺めながら、されるがまま、濃密な湯気の中で遊揺していた紅美子だったが、

「なんだ」
「……私ね、あんたがあっちに帰った日、病院行ったの。婦人科」
「そうか」

 バストを弄る手が、動きを止めることはなかった。

「やっべぇ、ってなんないの?」
「アフターピルは三日以内じゃなかったか? 推奨は二十四時間以内だ」
「さすが、よく知ってるね」
 紅美子は両手で湯を掬い、顔の前で指間から零しつつ、「ううん、普通のやつ。……私ね、ピル、飲み始めたんだ」

 井上が日本を発つと言った日に病院へ行き、処方してもらった。初日から飲むように指示され、明日の朝かと思っていたら、果たしてその日の夕方に生理はやってきた。

「なんでいま、そんなことを言うんだ?」

 前栽の竹垣の向こうには木立の影が見え、更に奥には夜空が広がっている。網膜にはいまだフィラメントの光が残り──違う、湯気のせいで溶けたように浮かんだ、月だった。

「……だってさ、思わない?」
 紅美子は輪郭のはっきりしない丸い光を眺め、「徹がかわいそうじゃん。十年もずっと、私との約束、守ってくれてたのに」

 井上の問いには、答えられてはいない。
 鼻の奥が、沁みてくる。
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