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シャイニーストッキング
第22章 ほつれるストッキング 1        佐々木ゆかり
 42 わからない…

「さぁ、今度は私からだ…」
 彼が越前屋さんに、お返しを注いでいく。

「あ、は、はい…」
 すっかり越前屋さんは舞い上がっているみたい…
 でも彼女の明るさに、心が少し軽くなった。

 本当にいつも、助けられる…

「さぁ、ゆかり部長どうぞっす」
 すると杉山くんが、ビールを注ぎに来てくれた。

「あっ、うん、ありがとう」
 ある意味、杉山くんはわたしにとって…
 越前屋さんと同じ、存在感――

「いやぁ、ヤバいっすね…」
 すると、ビールを注ぎながら、ヒソヒソ声で囁いてきた。

「え、ヤバいって?」

「あ、ほら、あの秘書さんすよ…」

「あ…」

「確かに、都市伝説級ですねぇ」
 と、後ろから、鈴木くんまで…

「え、あ、うん…そうでしょう」

『都市伝説』
 それは、鈴木くんが本社筋から仕入れてきた情報――

「いやぁ、あれ程の美人さんだとは…」

「そうっすよねぇ…」

「………」
 わたしは、なんだか、この二人の言葉に可笑しくなってしまい…
 さっきまでのシャネルの衝撃が、少し和らいできた。

 いや、開き直れた……か。

「……でしょう、わたしも、昨日、びっくりしちゃったのよ…」
 そして、彼らのノリに合わせていく。

「…っすよねぇ」

「…うん、そうねぇ……」

 このわたし自身の、開き直りの自覚に…

 やっぱり、もう、わたしは――

 そんな、騒めきを感じてしまっていた。

「杉山くんさぁ、思い切ってアタックしてみたらぁ…」
 
「え、マジっすかぁ」

「うん、マジっすよ、意外と意外かもぉ…」

 だって、こんな、軽口も言えるんだから…

 やっぱり、わたしには、もう――

「いやぁ、あり得ないっすよぉ」

「ううん、それは、やってみないとわからないわよぉ…
 男と女には、何があるか、起こるか、わからないんだからさぁ…」

 それは…
 自分自身へ向けた、言葉でもある――

「そ、そうっすかぁ……」

「うん、とりあえず、ビールでも注いできてみたらぁ…」

 そう、わからない…

 わたしの心も…

 シャネルの香りの意味も…

 何がなんだか、わからない――

 
 
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