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Memory of Night 2
第37章 パンドラの箱

 それから二人の両親はすぐに桃華に柔道を習わせた。免許が取れて車を買うまでは、短大は母が送り迎えをしていた。
 思い返してみると、千鶴といる時に桃華に向けられていた周りからの視線は、決して純粋な羨望や憧れだけではなかったように思う。
 綺麗な顔やスカートから覗く白い足を、生唾を飲むように眺める視線も確かにあったのだ。千鶴はあまり意識したことはなかったが、桃華はそれを敏感に感じ取っているようだった。
 もっと姉と歳が近ければ、姉が置かれていた状況とそれに対しての姉の気持ちを察してやれたかもしれないが、その頃の千鶴はまだ幼すぎた。それでも、幼いながらも年次が上がるにつれ少しずつ、姉のことを理解できるようになった。
 桃華はきっと男嫌いになってしまったのだ。華やかな容姿が原因で、子供の頃から嫌な思いをしたことが何度もあったのだろう。電車で痴漢にあったことも、大きな要因の一つだと考えられる。桃華には友達も少なかった。機上な振る舞いと愛想の無さは、女子から反感を買うことも多かったのだろう。
 あんなに容姿に恵まれていたのに、不器用な生き方しかできなかった桃華。幼い頃から千鶴は姉のそんな姿を見てきた。
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