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飛べないあの子
第5章 EpisodeⅤ
「・・・・・・でも、ごめん。お友達来てるところ邪魔しちゃって。普通に考えたらそうだよね。一人なわけないよね。なんか勝手に盛り上がっちゃって・・・・・・」
「そんなことない・・・・・・。すごく嬉しい・・・・・・」

甘く切ない慧の囁きを聞いて、来てしまった後悔が少し薄れた。
凛は慧が寂しい想いをしてないなら良かったと、凛は慧の背中をぽんぽんと軽く叩いた。

「あの・・・・・・。じゃあ、帰るね」
「なんで?一緒にいてくれるんじゃないの?」

慧がぎゅうぅっと凛を抱きしめた。

「え?だって、お友達が・・・・・・」
「来る予定なかったのに突然押し掛けてきただけだから大丈夫。もう帰らせる」
「でも・・・・・・・」
「お願い。帰らないで」

慧が腕の力を抜いて凛を見つめた。

「帰らないで」

思いつめたような表情を見て、凛は咄嗟に頷いてしまった。

凛は友人たちの事が気になって葛藤したが、慧はもう決めているようで凛の足元に置いてあったバッグを肩にかけると、有無を言わさずに凛の手を引いて歩き出した。

エレベーターに乗り込むやいなや、凛をぎゅっと抱きしめる。

やはりいつもと様子が違う。
いつものどこか余裕のある慧ではなかった。口数も少ない。

エレベーターを降りて、慧が自宅のドアを開けようとした時に凛はハッとして慧の手を引いて制止した。

「・・・・・・待って。お友達に何て言うの?」
「君が来たから帰ってじゃ、だめ?」
「だ、だめ!」

慧は少し考えてからドアを開けた。

「じゃあ、静かに入って寝室で待っててくれる?」

凛はわかったと頷いた。

凛は慧の後ろに隠れるようにして玄関に入ると、靴を持って上がろうとした。
慧が靴を受け取ってシューズクロークにしまう。

リビングからがやがやと賑やかな雰囲気が伝わってくる。
慧は玄関入ってすぐ左のドアを開けて、凛に入るように促した。

「すぐ帰らせるから」

慧はそう言って電気と暖房をつけるとバッグを置いてドアを閉めた。

寝室は初めて入る。大きなベッドと本棚と机があった。
ベッドに座って待っていようかと思ったが、誰かが入ってきたらと思うと落ち着かず、電気を消してカーテンに隠れることにした。

ガラスから冷気を感じて、わずかに身を震わせる。

(彼氏の本命が来ちゃって、慌てて隠れてる浮気相手みたいな気分・・・・・・)
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