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第1章 累（かさね）

６

それからまた２日後のことでありました。

慶彦は、上司の男性から大阪府にある農機具組み立て工場へ転勤すること自体に違和感を感じていたので、きっぱりと断ろうと思っていました。

今の職場よりも少しだけどお給料があがると言うけど、それはホンマのことなのだろうか…

福利厚生は充実していると言うけど、それはどういうコンキョがあって言うてはるのか…

寮は個室で冷暖房完備でテレビ冷蔵庫などの家電製品は整っているとは言うけど…

ホンマはせまくるしくてカビと毒キノコが生えているたこ部屋できたないふとんに入って従業員さんたちがザコネ…じゃないのか…

プロ野球Ｊリーグ観戦チケットやコンサートのチケットも従業員割引で手配すると言うけど…あれウソや…

従業員旅行はハワイの豪華リゾートと言うのはタテマエで…

ホンマは、工場のある町のとなりまちにあるハワイと言うなのスーパー銭湯へ行くことが従業員旅行だと言うことや…

その上に、従業員さんたちは大阪西成のあいりん地区で暮らしている人たちの日雇い労働者と聞いたけん…

なんぞぉこれは一体…

アカン…

課長にガツンと言わないと…

ぼくはホンマにだまされてしまう…

20年間今の職場でがんばってきたのに…

このままでは職場に殺されてしまう…

慶彦は、意を決して上司の男性にガツンと言おうとしていましたが、声をかけた時に上司の男性がニコニコ顔で慶彦に言うて来ましたのでガツンと言うことができずに急に弱々しい表情になってしまいました。