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アムネシアは蜜愛に花開く
第3章 Ⅱ 誘惑は根性の先に待ち受ける

巽が由奈さんを起こそうとするが、由奈さんは甘えるようにして巽にキスをせがむ。巽はそれを躱しながら頭をよしよしと撫でて、由奈さんをその大きな身体ですっぽりと包み込むようにして、抱きしめた。
絵になるようなその場面に、場はシーンと静まり返り、わたしの視界のその景色は色を失い、音をたてて引き裂かれていく。
ふたりを見ていたわたしの心が、悲憤とも憤怒とも判別つかないどす黒いものに覆われ始めて、息をするのが苦しくなってたまらない。
……わかっている。
巽は由奈さんを溺愛して、結婚するんだっていうことも。
だけど――。
「よくやるよなあ、あの専務。あのひとは場違いなんだから、拒めよな」
怜二さんも呆れているというより、巽を部外者だとした言葉が刺々しかった。
「あの感じなら、子供の方が先にデキてしまったりして」
じりじり。
また怜二さんの声が蝉の声に聞こえてくる。
わたしの胸がきりきりと音をたてた時、後の障子戸が開いて店員さんが正座をしながら告げた。
「飲み放題・食べ放題プランは、あと五分で終了になります」
だからわたしは、それに乗じて強制終了を宣言する。
「今日の宴はこれにて終了になります。皆さん、支度をして下さい!!」
にっこり笑ったわたしは、そのまま店員さんと一緒に先に部屋から出て、会計をすませると、どこからか巽がふらふらと現われて、財布を取り出した。
「専務。今日はわたし達が専務をご招待したいんです。もう既にお金は皆から徴収しているので」
「しかし……」
巽がやけにふらつく。
わたしは巽を支えながら言った。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です……。ちょっと飲み過ぎてしまったようで……」
ぐらりと巽の身体が傾いて、彼の熱い唇がわたしの耳に掠める。
びくっとしながらも、これはただの酔っ払いだと思い、半ば背負うようにすれば皆が部屋から出てきたため、そのまま外に出た。
絵になるようなその場面に、場はシーンと静まり返り、わたしの視界のその景色は色を失い、音をたてて引き裂かれていく。
ふたりを見ていたわたしの心が、悲憤とも憤怒とも判別つかないどす黒いものに覆われ始めて、息をするのが苦しくなってたまらない。
……わかっている。
巽は由奈さんを溺愛して、結婚するんだっていうことも。
だけど――。
「よくやるよなあ、あの専務。あのひとは場違いなんだから、拒めよな」
怜二さんも呆れているというより、巽を部外者だとした言葉が刺々しかった。
「あの感じなら、子供の方が先にデキてしまったりして」
じりじり。
また怜二さんの声が蝉の声に聞こえてくる。
わたしの胸がきりきりと音をたてた時、後の障子戸が開いて店員さんが正座をしながら告げた。
「飲み放題・食べ放題プランは、あと五分で終了になります」
だからわたしは、それに乗じて強制終了を宣言する。
「今日の宴はこれにて終了になります。皆さん、支度をして下さい!!」
にっこり笑ったわたしは、そのまま店員さんと一緒に先に部屋から出て、会計をすませると、どこからか巽がふらふらと現われて、財布を取り出した。
「専務。今日はわたし達が専務をご招待したいんです。もう既にお金は皆から徴収しているので」
「しかし……」
巽がやけにふらつく。
わたしは巽を支えながら言った。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です……。ちょっと飲み過ぎてしまったようで……」
ぐらりと巽の身体が傾いて、彼の熱い唇がわたしの耳に掠める。
びくっとしながらも、これはただの酔っ払いだと思い、半ば背負うようにすれば皆が部屋から出てきたため、そのまま外に出た。

