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蜜会
第2章 湧き出す
 今は聞かれたから答えちゃったけど、私はあまり、人に自分の勤め先を言わない。

 言えばだいたい「いいなぁ」「安定してる」「いつも定時に帰れるんでしょ」「給料よさそう」という反応が返ってくるからだ。

 そこにはだいたい「恵まれていていいよな」みたいな何かこちらとしてはスッキリしない感情が含まれていることが少なくない。

 私だって、別にコネで入ったわけでもない。

 きちんと勉強して、実家の隣県の採用試験をパスして引っ越してきた。

 基本の給料は安くても確かに保障は民間よりあるし、出産した先輩や同期たちは産休明けを時短勤務にして十六時くらいには仕事を終え、子供を育てながら働いている。

 最初のころは「そんなゆるい出勤時間でいいの?」と思ったけど、よく考えたらきちんと育休制度が整った職場でなくては、女性が若いうちから子供を育てながら働くなんて無理だ。

 たとえ給料のベースが低くなっても仕事は辞めなくていい。

 そんなふうに公務員がモデルにならなければ、民間にも同じ動きが生まれないからこういう制度は必要なんだなと知った。

 でも年度末と年度始めは民間と同じくらい目が回る忙しさだし、予算案だけでなく補正予算を組むときはみんな毎日夜の二十二時過ぎまで残ってノートパソコンとにらめっこしている。

 そして何かあったときの公務員バッシングも怖いから、ネームプレートをつけて外に出るときや公用車の運転をしなければいけないときなどは誰もがとても神経をとがらせている。

 結局、何かにつけ煩雑な処理を経るのは、税金を使って事業をしているからなのだとここに入ってから理解した。


「所属によっては大変なんですよ。市民課はいつ行っても戦場だし、納税課も怖い市民さんがたくさん来て命がけ。うちは農林水産だからそこまでの怖い思いはしないけど、しょっちゅう外に出て農家さんや漁師さんと話してこなきゃならないし……」


 説明したものの、まぁ理解してもらおうとも思わない。

 どうせ「楽な仕事で高い給料なんだろ」くらいに思われているだろうし、今回も適当に流そう。

 そうやって二十六歳になるまで、自分の仕事の話は外ではしないで来た。
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