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蜜会
第4章 満たされる
 梅雨どきだけど、それから三日後の義樹が来る日は朝からカラリと晴れて気温も高くなりそうだった。

 前夜に「車が出せそうだから、明日はドライブしよう」と連絡をもらったとき、私は「嬉しい!」と素直に返信した。

 初めてのドライブ……もう一か月半も前だけど、あれが楽しかった記憶が蘇ったのと、「家でエッチするだけ」よりも一緒にどこかへ出かけられるほうが、きちんと「つきあっている」と思えたからだ。

 それに毎回、出入りのたびに大家さんに義樹が見とがめられないかもちょっとヒヤヒヤするし、私のあの声がよそに万一聞こえていてもいやだから。

 だって、義樹に抱かれているとすごく気持ちいいから、声を上げるのも我慢しにくいんだもの。




 インターを出たよ、とLINE通話が来たとき、私は既に待ち合わせ場所である家のそばのコンビニにいた。

 せっかくの晴れた日だし、早起きして洗濯も済ませて気分はかなり良い。

 先週買った夏用のノースリーブワンピを初めて着てみた。

 黒と白の細かなギンガムチェック模様が入ったコットン素材のもので、中には少しセクシーなレースのスリップ。ちょっと今日は大人ぶってみたかった。

 義樹が飲むためにと缶コーヒーなどを買ってから、ちょうど来たあの赤いRV車の助手席に乗ると、まだシートから新車の匂いがしていた。


「車、大丈夫だったの?」

「ゴルフに行くって言って、出てきたから」

「だから来るのが早めの時間だったのね」

「そう。だから代わりに、ちょっといつもより早く帰るよ」


 日曜だから、明日からまた一週間が始まることを考えたら私もそのほうがありがたい。

 つくづく、祐一との食事で平日にしんどかったときとは違うことを実感する。

 思えば、何で私は祐一に「せめて土曜の夜にして」って言えなかったのかな。

 なぜ、我慢していたのだろう。

 もちろん奥さんがいる義樹と、独身の祐一を「どっちがいいか」なんて比べちゃいけないのだけど、やっぱり義樹といると気が楽で。

 ほんとは、「楽であること」に身を任せて、こういう関係に慣れきってはいけないってわかっているけど、今は義樹とこうして「たまに」会って、甘えて抱かれているのが心地よい。
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