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埋み火
第1章 忍び火
 その日は濃厚な二度のセックスで燃え尽き、いつもの居酒屋で夕食を取ると博之は急いで帰りのJRに乗った。

 疲れはあったが、男として嬉しい「イってすぐの二回戦」だったため上機嫌で帰れた。

 翌日も朝からホテルで体を重ね、お互いを求めあったらレイトチェックアウトののちに一階レストランのビュッフェで軽く昼食をとると二人は東京駅に電車で向かった。

 空調の効いた室内に長くいた後は、アスファルトに熱せられた息がつまるような空気はただただ不快だった。


「あそこ、ほんとデザートがおいしいのよね。京都に着くまではおなかが減らないと思うわ」

「そうだな、俺も夜まで余裕でもちそうだ」

「ね、あんなにして、午後から仕事なんかできないでしょ」

「休みにしておいてよかったよ」


 霧子がくすくす笑う。


「私も疲れちゃった。おじいちゃんに全部、持ってかれたもん」


 霧子は博之をよく年寄り扱いする。


「おじいちゃんはお前のエキスで若返ったよ」

「ぜんぶ吸われて、おばあちゃんになりそう」

「大丈夫だ、今もすっげぇエロい顔してる」


 博之はプロジェクトが一段落してさほど忙しくないので今日は半休ではなく丸ごと休みにしてある。

 霧子を見送ったら、一時間ほど書店やCDショップで時間をつぶして定時まで働いたふうを装って家に帰るつもりだ。

 ごみごみした蒸し暑い東京駅の中を東海道新幹線のりばまでやっと歩いてたどり着くと、霧子は手をつないだままあいている方の手でショルダーバッグから帰りの切符を取り出す。


「あのさ。言ってなかったけど、来週の盆休みさ。丸ごと家にいないから」

「うん」

「旅行に行くんだ」


 霧子の顔がこわばった。

 博之が一人でどこかに旅行に行くわけもない。


「……そう。どこ行くの?」

「新潟だよ。じゃ、そろそろ新幹線の時間だろ」


 霧子は何も言わず、足元に視線を落としたまま動かない。

 こんな衆目の前で、霧子が泣きだすのではないかと博之は怯えた。


「気をつけて帰れよ」

「……うん」

「楽しかったよ、きり」


 時間ぎりぎりまでいつも改札の前で博之の手を握って離さない霧子が、ごねることなくすっと手を離した。


「ばいばい」


 目も合わせず、霧子はそのまま新幹線のホームへと消えていった。


《第2章 熾し火 へ》
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