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埋み火
第2章 熾し火
(賢治さんと付き合っちゃうほうが確かに気楽だわ。私、賢治さんが家に帰っていくのも賢治さんが奥さんの話をするのも、仕事で会えないのも今は全然つらくないもの)


 自分の中にこのような情熱が潜んでいることすら、霧子はこの年齢になるまで気付かなかった。


(賢治さんとなら、ちゃんと恋人ができるまでの間、きっと「聞き分けのいい愛人」になれそう。でも私は苦しくても、拗ねて泣いて困らせちゃっても、ひろと一緒がいい)


 触れたくて、抱かれたくて苦しいのは博之しかいないのだと、皮肉にも他の男に抱かれて霧子は思い知った。

 賢治がいやなのではない。

 むしろ一人が寂しいときに誘い出して優しくしてくれて嬉しかった。

 博之が鈍感で遠いからこそ、すぐそばにある優しさが沁みた。

 ただ、賢治の腕の中では心が体と連鎖して熱反応を起こさなかった。

 何度も抱かれれば違ってくるかもしれないが。

 初めて男に抱かれた若い娘じゃあるまいし、何であんな他人の夫を一途に思っているのかと毎日のように自分に疑問を投げかけていたが、つまりそれほどまでに博之は自分の心の中に住みついていたのを思い知った。

 顔も知らないころからチャットだけで付き合うと、こんな錯覚に嵌まってしまうのかと可笑しくなった。

 きっといいように博之に化かされているのだろう。


「霧ちゃん、そんなこと言わないで」


 賢治がまた霧子にのしかかってきた。

 頬から枕へと伝い落ちる涙に必死に口づける。

 なんだか動物が自分の子供をいたわっているみたいだ、と表情も変えずに霧子は思った。

 これほど今そばにいて裸で触れ合って体もつなげたというのに、今は賢治がどこか知らない町に住む赤の他人のように思える。

 いちど寝たくらいでは、博之のようには愛せなかった。
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