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鬼ヶ瀬塚村
第1章 起承転結"起"
僕が真理子さんを恋人なのにさん付けする理由は今口にした"彼女が忙しい"事と単純に大学時代からの癖だ。
仮にも過去は大学の先輩だったのだから。
しかし、真理子さんが
『ノブ、真理子って呼んで構わないんだよ?』
と再三言っても僕は呼ぶ事が一度も出来なかった。

真理子さんと喧嘩した日も(とは言えだいたいが真理子さんの八つ当たりだけれど…)
割りとずぼらで家事が不得意な真理子さんが頑張って僕のシャツを洗濯してくれた日も。
交際5年目記念にカナダに旅行へ行き恋人相応の夜を過ごした時も。
その時、真理子さんが何度も何度も僕の上で僕の名前を呼んでも、僕は"好きだよ、真理子さん"としか言えなかった。

僕はそういう恋人の寝室の時間でも下ばかりだし、彼女より僕は劣っているのだ。
僕は彼女より随分下に生きている男なのだ。

真理子さんは気にしていなくても、僕はその意識にたまらく自身を束縛させている。

…そして僕らの職業が大きな原因と言えるんだ。

僕は業界では情けない負け組、真理子さんはきらびやかな勝ち組だ。
ペンネームは"肉きゅうミケ"ふざけた名前に聞こえるが、これが今日本中のティーンを震えさせているホラー漫画家だ。
そして今、テラスで3本目になる煙草を吸うその人だ。
"肉きゅうミケ"先生は大のヘビースモーカーなのだ。

去年の今頃は【三浦先輩の秘密】というタイトルの漫画が大ヒットし、映画化された。
主役は某アイドルグループの青年が抜擢され、話題作となった。

真理子さんは"大きなスクリーンで観たいから一緒に行こう!"と無邪気に僕を誘ったけれど…僕は誘う彼女の手を小さく払い除けた。

僕は彼氏失格だ。
彼女の成功に嫉妬し、彼女から小さく逃げたのだ。
笑顔で"おめでとう"と言えていたのは若い内だけだった…僕は…三十路と言う名の道に立ち、未だに子供じみた劣等感で自分自身を縛り上げ、真理子さんを祝福できなかったんだ。

僕は…彼氏失格なのだ。
そして僕は、漫画家失格なのだ。

ペンネーム通り猫のような顔立ちの"大先生"がテラスから僕を一瞥した。
僕は…無意識にそれを知りながら無視した。
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