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鬼ヶ瀬塚村
第3章 優子

彼はさっき電話に対応してくれた真理子さんの叔父に当たる一郎さんだった。
年は僕より少し上の37歳と聞いていたが、若く見える。彼もまた左目蓋が三重だった。
『いやぁ~ほんとすみませんね~遅いから父ちゃんに言われて迎えに来たんでずよ!……優子おめ軽トラ乗れ』
『えー…オレごっちがええでよ』
優子ちゃんが真理子さんのサーフを指差す。
『優子、いい加減にせんよぉったらにぃ!…ほんと田中さん…こんな田舎にわざわざすみませんね、ん?怪我しどるんか?』
優子ちゃんが軽トラの荷台に乗り込みながら
『オレが骨貰いかけたんだわ!』
とピースを向けながら言った。
『優子!!後いっちゃんもその古い言葉やめて!』
真理子さんが再び金切り声を上げる。
一郎さんは何度も深々と頭を下げながら
『田中さん、ほんと…ほんとにすみませんね。こんな場所ですがどうぞゆっくりしてくださいね』
とニコニコしていた。
『いっちゃん、田中さんなんて不気味だわ。彼、名前信人っていうのよ』
それを聞いて一郎さんは目を細めて笑顔のままうんうん頷く。
『あ~あれだっぺな。優子のクラスメイトにも足のはえぇノブていたな!な、優子!』
一郎さんは優子ちゃんに振り返りながら言う。
『んだよ。同じ名前だ、珍しいっぺよ。足早いんだかんね?』
優子ちゃんが軽トラで足踏みしながら言った。よほどその"ノブ"という子は村では有名なのだろう。
『どにかく、みんな待ってるんですわ。信人くん真理子ちゃん車出すっぺよ』
一郎さんは麦わら帽子を被り直し、軽トラの運転席に乗り込んだ。荷台で優子ちゃんが楽しげにしている。
なんだか肩透かしを食らった気持ちだ。あれだけの禍々しい村の扉を後に、これだけ初対面の僕になつっこい彼ら…もっと閉鎖的で冷たくあしらわれるかと思っていたが、どうやら村のこの新鮮で健康な風景と同じように真理子さんの一族は柔らかい人達のようだ。
そして少し安心した。
『ノブ、怪我大丈夫?立てる?』
『うん、大丈夫だよ…真理子さんこそ大丈夫?』
『私は頑丈に出来てるから平気、それよりバンパー凹んでるわ。東京帰ったら即修理よ、優子のせいだからお父さんに修理代払ってもらう』
年は僕より少し上の37歳と聞いていたが、若く見える。彼もまた左目蓋が三重だった。
『いやぁ~ほんとすみませんね~遅いから父ちゃんに言われて迎えに来たんでずよ!……優子おめ軽トラ乗れ』
『えー…オレごっちがええでよ』
優子ちゃんが真理子さんのサーフを指差す。
『優子、いい加減にせんよぉったらにぃ!…ほんと田中さん…こんな田舎にわざわざすみませんね、ん?怪我しどるんか?』
優子ちゃんが軽トラの荷台に乗り込みながら
『オレが骨貰いかけたんだわ!』
とピースを向けながら言った。
『優子!!後いっちゃんもその古い言葉やめて!』
真理子さんが再び金切り声を上げる。
一郎さんは何度も深々と頭を下げながら
『田中さん、ほんと…ほんとにすみませんね。こんな場所ですがどうぞゆっくりしてくださいね』
とニコニコしていた。
『いっちゃん、田中さんなんて不気味だわ。彼、名前信人っていうのよ』
それを聞いて一郎さんは目を細めて笑顔のままうんうん頷く。
『あ~あれだっぺな。優子のクラスメイトにも足のはえぇノブていたな!な、優子!』
一郎さんは優子ちゃんに振り返りながら言う。
『んだよ。同じ名前だ、珍しいっぺよ。足早いんだかんね?』
優子ちゃんが軽トラで足踏みしながら言った。よほどその"ノブ"という子は村では有名なのだろう。
『どにかく、みんな待ってるんですわ。信人くん真理子ちゃん車出すっぺよ』
一郎さんは麦わら帽子を被り直し、軽トラの運転席に乗り込んだ。荷台で優子ちゃんが楽しげにしている。
なんだか肩透かしを食らった気持ちだ。あれだけの禍々しい村の扉を後に、これだけ初対面の僕になつっこい彼ら…もっと閉鎖的で冷たくあしらわれるかと思っていたが、どうやら村のこの新鮮で健康な風景と同じように真理子さんの一族は柔らかい人達のようだ。
そして少し安心した。
『ノブ、怪我大丈夫?立てる?』
『うん、大丈夫だよ…真理子さんこそ大丈夫?』
『私は頑丈に出来てるから平気、それよりバンパー凹んでるわ。東京帰ったら即修理よ、優子のせいだからお父さんに修理代払ってもらう』

