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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第22章 天孫降臨
【1】
……その男神はやはり、この常闇の国にあっても美しかった。土雲が語った通り、髪も衣も洗練されて……今しがたここに天降ってきたかのような、自分が最後にその姿を見た時のような。
(……日嗣様)
見目には何も変わらない。ずっと求めてきた、その男神と。
「神依」
「……」
しかし名を呼ばれた神依は、一度何かを口にしかけて再び固く唇を結んだ。
この神にどう応えればいいのか、自分でも分からない。名を呼ぶこともできない。ただ伝えたいことは確かにあったのだが、今は聞いてもらえないような気もした。
だからか自然と視線が地に落ちて、同じように、言葉も腹の奥でなりを潜めてしまった。その間、今はもう遠くに在る見えない龍の足音だけが耳に届く。ここまで遠ざかれば、あの重い金属の音も規則的に聞こえた。足音ではない。もしかしたら心の臓の鼓動だったのかもしれない。
そんなことを考え時を遣り過ごし、それがしばらく続けば、男の方が先に口を開いてくれた。
「どうした。……いや、久しぶりに会ったからな。驚いて呆けているのか」
「……っ」
言葉と共に男が地を踏み締める音がして──直後、気付いた時には男の柔らかい袖に体が包まれていた。同時に胸元に引き寄せられ、あの懐かしい香の匂いが鼻の先でほころんだ。
……その男神はやはり、この常闇の国にあっても美しかった。土雲が語った通り、髪も衣も洗練されて……今しがたここに天降ってきたかのような、自分が最後にその姿を見た時のような。
(……日嗣様)
見目には何も変わらない。ずっと求めてきた、その男神と。
「神依」
「……」
しかし名を呼ばれた神依は、一度何かを口にしかけて再び固く唇を結んだ。
この神にどう応えればいいのか、自分でも分からない。名を呼ぶこともできない。ただ伝えたいことは確かにあったのだが、今は聞いてもらえないような気もした。
だからか自然と視線が地に落ちて、同じように、言葉も腹の奥でなりを潜めてしまった。その間、今はもう遠くに在る見えない龍の足音だけが耳に届く。ここまで遠ざかれば、あの重い金属の音も規則的に聞こえた。足音ではない。もしかしたら心の臓の鼓動だったのかもしれない。
そんなことを考え時を遣り過ごし、それがしばらく続けば、男の方が先に口を開いてくれた。
「どうした。……いや、久しぶりに会ったからな。驚いて呆けているのか」
「……っ」
言葉と共に男が地を踏み締める音がして──直後、気付いた時には男の柔らかい袖に体が包まれていた。同時に胸元に引き寄せられ、あの懐かしい香の匂いが鼻の先でほころんだ。

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