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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第19章 還るべき場所
そこは全てが失せて何もない、闇夜が広がるだけの空間だった。
だが……
「行ってきます……お父さん、お母さん」
神依は笑顔でそれを告げると、再び前を向いて走り出す。
きっと長い間、優しい両親はこの背を見守ってくれるはずだと信じ、また少し世界を違えてしまった一組の夫婦神は、その思いのままにしばらくその場に立ち尽くしていたが……やがて櫛名田が落ち着いた頃、素戔鳴はその肩を抱いて屋敷に戻るようようやく促した。
何とか持ちこたえた、涙だった。けれどまだ、慌ただしい旅立ちの名残も、娘が残していった山程の物の片付けも残っている。今枯らしてしまったら、涙が足りなくなってしまう。
「──どうして、あんな子を連れてきたのよ……」
腫れた目で、移り過ぎた情と溢れ過ぎた愛情によって紡がれた恨み言。
「ああ……本当にな。まったくだ」
それは奇しくも残された二人の新しい絆となって、長い長い時、彼らの心に残ることになった。
神依は確かにこの世界に在っても“神依”で、けれどそれ以上に深い神々の愛情を一身に受けて、ようやく前へ進む力を取り戻した。
その先には危険もある。それでも一人、駆けていくことを決めた。
それは別れではなく──巣立ち。
神依は確かにこの世界から再び生まれ、また生きていくことを決めたのだった。
.
だが……
「行ってきます……お父さん、お母さん」
神依は笑顔でそれを告げると、再び前を向いて走り出す。
きっと長い間、優しい両親はこの背を見守ってくれるはずだと信じ、また少し世界を違えてしまった一組の夫婦神は、その思いのままにしばらくその場に立ち尽くしていたが……やがて櫛名田が落ち着いた頃、素戔鳴はその肩を抱いて屋敷に戻るようようやく促した。
何とか持ちこたえた、涙だった。けれどまだ、慌ただしい旅立ちの名残も、娘が残していった山程の物の片付けも残っている。今枯らしてしまったら、涙が足りなくなってしまう。
「──どうして、あんな子を連れてきたのよ……」
腫れた目で、移り過ぎた情と溢れ過ぎた愛情によって紡がれた恨み言。
「ああ……本当にな。まったくだ」
それは奇しくも残された二人の新しい絆となって、長い長い時、彼らの心に残ることになった。
神依は確かにこの世界に在っても“神依”で、けれどそれ以上に深い神々の愛情を一身に受けて、ようやく前へ進む力を取り戻した。
その先には危険もある。それでも一人、駆けていくことを決めた。
それは別れではなく──巣立ち。
神依は確かにこの世界から再び生まれ、また生きていくことを決めたのだった。
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