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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
 それは本当に何か苦悩するような表情で、姿だけとはいえ幼子がするにはあまりに悲痛な感情を含んだものだった。
 けれども次に目を開いた天照は、自分に何かを呑み込ませるように──泣きそうな顔をしながらも、ただ一度、しっかりと頷いた。
 「よろしいのですか……姉上」
「……構わぬ」
月読の囁きに、天照はその決断が揺らがぬよう、急ぎ何かを仰ぐよう空に腕を伸ばす。
 するとすぐにそこに波紋が揺らぎ、その女神が手にするには余りに大きな──一枚の鏡が姿を顕し、虚空に浮かんだ。
 「──日嗣──面を上げよ」
「……はい」
そうして命に従い、半身を起こした日嗣の目に真っ先に飛び込んできたのは……太陽にも見紛う程の、眩い金色(こんじき)の光輪。
 「っ……!?」
その銅鏡は、長き時を経て土から掘り出され、人によって飾られるものとは遥かに異なる──緑青(りょくしょう)を生じさせること無く永遠に禁色の耀きを纏い、故に太陽を司る天照の形代として、かつて、豊葦原に祭るよう日嗣に与えられた宝だった。
 剣と、玉と。三種の内の、後一つ。
 その名を、八咫鏡(やたのかがみ)と呼ぶ。
 「誰ぞ、これを打ち打ちて八十(やそ)にも砕き、角を磨いて程よき飾りに仕立てて遣わせ」
「お祖母様……」
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