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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第18章 垂る穂
【1】

 その兎神は、まだ幼かった。
 そして今よりもっと幼い時、祖父から怖い話を聞いた。
 それは“わに”の話。
 お祖父ちゃんのお祖父ちゃんのお祖父ちゃんの……ずっと昔のお祖父ちゃんの話。
 海を渡るために“わに”を騙して跳び石の代わりに使ったお祖父ちゃんは、それが“わに”にばれて怒られて、べりべりと毛を剥がされてしまったらしい。それで真っ赤になった肌が痛くて痛くて泣いているところを意地悪な神様に騙され、もっと痛くしてしまった。
 そこへ、意地悪な兄神様に意地悪をされていた一番下の弟……伍名様がやってきて、優しく傷を直す方法を教えてくれたという。
 だがまだ幼かった兎神は、それを聞いて以来、跳び石が渡れなくなってしまった。
 もしこの石が“わに”が化けていたものだったらどうしよう。大きな口でかじられて、毛をむしられたらどうしよう。
 そう考えると、怖くて体がぷるぷる震えた。
 それで兎神は、仲間達から弱虫だとのけ者にされて、ひとりぼっちになってしまった。
「……」
しかし、ある日どの兎神よりも偉くて尊い──ずっと昔のお祖父ちゃん兎を助けてくれた、伍名様が自分を迎えに来た。
 そして、ある巫女の元で暮らしてみないかと誘われた。
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