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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第16章 白日の下
禊はある幾つかの点を、失念していた。
それはこの見せ物を楽しむ観客達が、襲い来る男達と同様に悪意を持っていたこと。そして劇が終わるまで大人しく座して拍手喝采を与えてくれるような、品のある観客ではなかったことだ。
天照は袖で口元を隠しながら、傍らの玉衣にこっそりと耳打ちをする。
それに玉衣もくすくすと笑い、また隣の巫女にそれを伝える。そしてそれが数回繰り返され、最端の巫女にまで忍び笑いが伝わった時──
「──えっ……」
「!」
身動きもできないまま禊を見守っていた神依は、背後からその巫女にドンッと背を押されて、受け身も取れずに顔から地面に転かされた。
「──神依様!」
「っつ……」
それに、禊が反応しないはずがない。
神依は慌てて半身を起こし、自分に駆け寄ってくる禊を見上げる。
「禊──」
そしてその瞬間、その背後に寄る影をも視界に捉えて目を見開いた。
その影は、先程神依が片付けたはずの空の酒瓶を持ち……それをゆっくりと振りかざす。
それが神依の見たまま本当にゆっくりだったのか、それとも一瞬のことだったのかは分からない。
ただそれを振り下ろした大兄は、あの伍名が訪れた晩の禊のように昏(くら)い目をして……地に崩れ行く、かつての弟分を眺めていた。
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それはこの見せ物を楽しむ観客達が、襲い来る男達と同様に悪意を持っていたこと。そして劇が終わるまで大人しく座して拍手喝采を与えてくれるような、品のある観客ではなかったことだ。
天照は袖で口元を隠しながら、傍らの玉衣にこっそりと耳打ちをする。
それに玉衣もくすくすと笑い、また隣の巫女にそれを伝える。そしてそれが数回繰り返され、最端の巫女にまで忍び笑いが伝わった時──
「──えっ……」
「!」
身動きもできないまま禊を見守っていた神依は、背後からその巫女にドンッと背を押されて、受け身も取れずに顔から地面に転かされた。
「──神依様!」
「っつ……」
それに、禊が反応しないはずがない。
神依は慌てて半身を起こし、自分に駆け寄ってくる禊を見上げる。
「禊──」
そしてその瞬間、その背後に寄る影をも視界に捉えて目を見開いた。
その影は、先程神依が片付けたはずの空の酒瓶を持ち……それをゆっくりと振りかざす。
それが神依の見たまま本当にゆっくりだったのか、それとも一瞬のことだったのかは分からない。
ただそれを振り下ろした大兄は、あの伍名が訪れた晩の禊のように昏(くら)い目をして……地に崩れ行く、かつての弟分を眺めていた。
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